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——よかった。嫌われてなくて。
身体中に張り詰められていた緊張の糸に遊びができた。
紗和は羽が生えたような足取りで総務課に戻り、未だパソコンとにらめっこしている橋田に報告する。
「橋田さん、渡して来ました」
橋田はズレた眼鏡を直しながら紗和の顔を覗いた。
「ありがとう……どうしたの北村さん。ニヤニヤして」
「えっ?!」
慌てて口元を押さえると、閉じてたつもりの口はだらしなく緩んでいた。
「なんでもありません……」
——つい、嬉しいからって浮かれていた……まだ失敗した訳じゃないからって、気を緩めることはできないのに。
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