1章

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——よかった。嫌われてなくて。 身体中に張り詰められていた緊張の糸に遊びができた。 紗和は羽が生えたような足取りで総務課に戻り、未だパソコンとにらめっこしている橋田に報告する。 「橋田さん、渡して来ました」  橋田はズレた眼鏡を直しながら紗和の顔を覗いた。 「ありがとう……どうしたの北村さん。ニヤニヤして」 「えっ?!」  慌てて口元を押さえると、閉じてたつもりの口はだらしなく緩んでいた。 「なんでもありません……」  ——つい、嬉しいからって浮かれていた……まだ訳じゃないからって、気を緩めることはできないのに。
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