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「確かに、権代さんの女性経験が豊富なのは事実ですが、どんな方にも誠実に接してくれてますよ。レストランの店員さんにもお礼を言う。取引先のお孫さんの自慢話も聞いてくれる。拙い好意のアピールにも、正面から向き合ってくれます」
——私の女としての魅力が薄いのは事実かもしれないし、これまでたくさんからかわれた。だけど馬鹿にはしてない。あの人は、決して私を蔑ろにはしなかった!
「権代さんは一人一人の人格は尊重する人です。いい加減な態度は取りません。複数の人に同時に手を出したことは無かった。自分に好意を寄せている人を不用意に傷付ける態度は……決して取らない」
紗和は瞳で問いかける。何故、好いた男の信実がわからないのかと。察した家川の顔が塗りたくられたような朱になる。
「う、うるさいっ! 偉そうなことばかり言って!」
彼女が持っていた鞄を振り上げ紗和が身構えた。
「おっと」
聞き慣れた軽めの声がしたと思ったら唾一つかからない。家川の手首は捕らえられており、そこからビクともしなかった。
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