第1章  錯覚世界

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 部の名は、科学部。名前からしてみればマッチングしている。科学部に似たような部活がこの学校にもう一つある。理科学部だ。だが、その名は現在では抹消登録となっている。そして、代わりにできたのがこの科学部らしい。やれやれだ。どこかで俺たちを見ているであろう神様は、俺たちに試練を与えたのかもしれない。いや、考え過ぎかもしれないな。どうやら、俺の頭の中までおかしくなってしまったようだ。今日は今日、明日は明日の風が吹く。明日に『これは夢でした』、と願いたいものだ。      × × ×  翌日の朝−−−−  俺は目を覚ますと、見覚えのない天井が自分の視界に入り込んできた。体を起こすと、見覚えのない布団、どうみても女物だ。辺りを見渡す。俺は自分の目がおかしくなったのかと思い、目を擦る。そこには、西高の女子制服だ。俺の部屋にはないものだ。おまけに部屋自体が全て違っている。俺は近くにある縦長の鏡の前に急いで立った。俺は言葉を失った。  そこにあるはずの姿形はどこかに消え去り、性別すら変わっていた。この顔は俺じゃない。  俺ではないが、俺なのだ。 「この顔は……」  今日は早めに学校へつくと、すぐに俺と同じ状況であろう人物の元へと歩み寄った。 「ちょっと来い!」  俺はそいつの手を引っ張り、人気のない場所へと移動する。この時間帯、教室から近い場所といえば、南校舎の二階の東の位置する場所ぐらいしかない。  手を握ったまま、渡り廊下を渡り、いいところで足を止める。 「はぁ……」  ため息を漏らす。 「どうやら早速起こってしまったみたいね」  俺がようやく口を開いた。俺というか、その中にいる人物が言ったのだ。声は俺なのだが、口調が全く違う。俺は女喋りなどしない。そして、俺もまた、女声で男喋りをしているのだ。 「ああ……。まさか、こんなにも早く、次の現象が起こるとは俺も思っていなかったよ」 「そう。それにしてもなんで、あなたと私が入れ替わっているわけ?」 「それは俺の方が知りたいね。俺は何もしてねぇーし、何か起こした記憶なんてない」  と、俺は答える。  目の前には俺が、俺の前には氷童の姿があった。 「それはともかく、このままの姿で授業に出るのはまずいだろう」
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