第1章  錯覚世界

6/30
前へ
/32ページ
次へ
「なぁ、光一」 「なんだ?」 「俺の頬を抓ってくれないか?」 「それはいいけど……」  と、光一は俺の言われた通りに頬を抓る。 「痛っ!」  現実だ。嘘偽りの無い、現実だ。どうしてこうなった。俺だけが可笑しいのか? 「だ、大丈夫か?」 「おい、一緒に行った事があるよな!」  光一の肩を揺さぶり、俺は光一に言い寄る。だが、光一は俺の変な行動に対して、驚いている。 「ねぇーよ。俺はお前がサーフィンをしていた事自体、初耳だ!」  ハッキリと言われる。 「は……ははは! 嘘だよな。こんな事が起こってたまるものか……。どうなってやがるんだよ。おかしいだろ? 夢なら覚めてくれよ……」  俺は授業が始まるまで薄笑い続けた。  それから俺は放課後になるまで一日中、授業の内容が全く頭の中に入らなかった。  放課後−−−−  夕日色に染められた教室に俺はポツンと、座っていた。教室内には下校する生徒や部活に行く生徒、課題をしている生徒に別れていた。  朝から訳の分からない現象。自分では何が起こったのかもいまだに実感が湧かない。ただただ時間が過ぎるだけだ。 「帰るか……」  俺は荷物を持って家に帰った。  一日中考えたせいなのか、今日はいつもより睡魔が早く襲ってきた。段々、眠くなってくる。気付いた頃には、眠っていた。そして、朝がやってくる。  世界線が変わってから一日目−−−−  俺は昨日のことがうそであることを願って学校へと登校した。  そして、もう一度、光一に昨日の話をしてみる。今度は優しめに話し掛けて−−−−。  だが、結果は変わらなかった。おまけにクラス内がおかしな事になっている。昨日まで居たはずの生徒がいないのだ。その代わりに知らない生徒がいなくなった生徒の席に座っている。人数も減り、周りの人間は、それに気付いていない。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加