第1章  錯覚世界

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「どうなっているんだよ。どう見てもおかしいだろうが……」  俺の頭の中は混乱する。次から次へと、おかしな現象が起こっている。この状況を打破する手などあるはずがない。授業が始まる。担当教師もまた、クラスの奴らと同じように記憶を書き換えられているようだ。だとするならば、いなくなった人間に気づくはずだ。誰だ、一体誰がこんな世界を創った。  混乱する中、俺は机の中を漁る。中に見覚えのない紙が入っていた。手にすると、二折りに畳まれており、俺はゆっくりとその紙を開ける。 『午後三時半、南校舎4階、元かるた部部室』  と、書かれてあった。  どういう事だろうか。これ書いたのは誰なのか。どうしてこれを俺に渡したのか。訊きたい事は山程ある。もし、仮にでもこの言葉を信じて行くとするならば、命の保証はないと思っていた方がいい。俺には今までの記憶がある。勝手に誰かに書き換えられていないのだ。この世界を支配してしまった野郎にしては、俺はイレギュラーと言っても過言ではない。だとするならば、この手紙は殺害予告を意味しているのだろうか。馬鹿馬鹿しい、そんなはずがある訳ないだろう。  俺はその受け取った薄っぺらの手紙を皺くちゃに丸めて、学ランのポケットの中に入れた。  犯人は一体誰だ。魔法や魔術なんて、こんな世界にありえない。そんな非科学的な現象は、作られた物語の中だけで十分だ。錬金術、陰陽も同様して選択肢の中から削除する。最後に残るとするならば、催眠術、宇宙人、マジック。しかし、どれも今の状況に当てはまるものなんて一つもない。  どうする。時間が過ぎて行くばかりだ。対策しようなんてない。  そんな事は繰り返し、繰り返し考えながらいつの間にか放課後になっていた。  この学校は、月・水・金の三日間は、授業が五限目で終わる。  下校の準備を終え、荷物を持つと手紙に書いてあった指示に従い、南校舎の指定された場所へと向かう。指定時間まで残り二十分。まだ、余裕がある。元かるた部の部室の前まで来ると足を止める。  ここは数年前までは、本当に競技かるた部がいたらしく、全国大会まで出場したとか、しなかったとか、そんな曖昧な歴史がある。ドアノブに手を置き、回し、ゆっくりとドアを開けた。  しかし、そこには驚く光景があった。いや、驚くというのは本当であるが、『俺』、一人ではなかったのだ。俺以外にも他の生徒がいたのだ。その中に一人、知っている人物がいた。意外だった。そいつの名は−−−−
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