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1.(第一章)
いつも教室は明るい日に照らされて、眩いほどの光を机上のつるっとした表面で滑るように反射させていた。
ガヤガヤとわく生徒たちの声はほとんど耳に届かず、教壇では担任が何やら声を張り上げているようで、口がパクパクと指人形のように動く。
高城圭(たかぎけい)はその場とは全く関係のないことを考えていた。今日は帰ったら何のアニメを見ようか、まずは昨日の続きだけど残り四話だからすぐ見終わっちゃうし、その後は……たいてい考えているのはそんなことばかりだった。
「オレらんとこ入る?」
突然声をかけられ思考が停止する。頭の中を覗かれたのではないかとありもしない妄想をしてしまう。覗かれたところで痛くも痒くもないのだが。
圭を誘ったのは、スクールカーストでいったら遥か雲の上に存在する小坂遼太(こさかりょうた)だった。バレー部の副キャプテンか何かで、クラスでも一際目を引く明るさを持っており存在感がある。彼がいなかったらすぐにわかるのだ、空気的にも体の大きさ的にも。
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