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ACT.4
二日後、少女漫画を参考に修正したネームを紗羽に読んでもらうと、彼女は「すごくキュンとしました~! 面白かったです!」と興奮気味に話してくれた。
「ありがとう。じゃあ、これを担当さんに見てもらうね」
「はい、結果を楽しみにしてます!」
そう言って紗羽は、満面の笑みを浮かべた。
この作品を作れたのは紗羽のおかげだったので、彼女が食べたいと言っていた白桃のパフェをお礼にご馳走することにした。
パフェが届くのを待つまでの間、紗羽はジュースを入れにドリンクバーへ向かった。
俺は先に届いたハンバーグを食べていると、紗羽が席に戻ってくる。しかしその姿に違和感があった。
「それ、どうしたの?」
彼女は長袖のブラウスを着ていたが、腕の部分が濡れていた。
「あ、さっきすれ違った人とぶつかって、その人が持っていたスープがかかっちゃったんですよねー」
「え!? 熱くなかった!?」
「ちょっと熱かったですけど、平気です」
苦笑する紗羽の言葉に驚き、「火傷してない!? 大丈夫!?」と慌てて彼女のブラウスの袖をまくろうとした。
「やっ……!」
その時、紗羽が小さな悲鳴を上げ、腕をテーブルの下に引っ込めた。
「あ、ごめん……」
冷静になり、自分の行動を反省する。女の子の服を脱がそうとするなんて最低だ。
「いえ……。その、火傷はしてないので大丈夫です」
紗羽はそう言って微笑んだが、無理して笑っているのが分かった。
彼女は真夏にも関わらず、いつも長袖の服を着ている。
ニーソックスもいつも履いているので単に寒がりなのかもしれないが、もしかしたら腕に傷などがあって、見られたくないのかもしれない。
何はともあれ、彼女が嫌がっていることに深入りするのはよくないだろう。
少ししてパフェが運ばれてきて、紗羽は「おいしい!」と笑みをこぼして食べる。次第に作り笑いはなくなったように見えたので、俺はホッとして食事を再開した。
翌週、俺は出版社を訪れ、担当さんに用意していたネームを渡した。ひどいことを言われても反論してやろうと身構えていると、
「おっ、いいじゃん。面白いよ」
手の平を返してそう言ったので驚く。
「これなら掲載もいけそうだな。次の会議に出してみるよ」
肯定的な言葉に「やった!」と心の中で叫ぶ。
俺は出版社を出て思わずガッツポーズをした。早く、早く紗羽に喜びを伝えたい。俺は急いで電車に乗り、ファミレスへ向かった。
「いらっしゃいませ!」
二人がけのテーブル席へ案内され、店内を見回して紗羽を探す。
――けれど、彼女の姿は見つからなかった。
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