新婚さん

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美人とジャックさんに誉められるとどこか自慢気にうれしくなる。 ジャックさんはいつも誉めてくれるけど。 私もずーっと誉められていたいようにも思って、少しばかりアクセサリーを集めてみてもいいかなぁとも思ってくる。 いつまでも女としてジャックさんに見てもらえるように。 用意ができたと侍女に呼びにこられて、私とジャックさんはミミとロベール様が暮らす屋敷のほうにいかせてもらう。 すぐ隣の家を使っていないのはわざとじゃない。 調度品が揃っていた家を選んだらこうなった。 お邪魔しまーすと侍女に案内されるようにミミたちの家にいくと、とてもお邪魔なところにきてしまったようで、扉を開けてどうぞと促されて入ろうとしたら、べったりくっついたキスシーン。 ミミがロベール様に抱きついて、ロベール様がミミの腰に両腕をまわして抱き止めたキスシーン。 二人はとてもうまく結婚生活を送っているようだ。 お邪魔しましたーと私は侍女が開いた扉を閉めさせてもらう。 「きゃあぁっ。モニカっ、待って待ってっ」 ミミに気がつかれて、大きな声をあげられた。 私は扉を開けられないように扉をおさえて、ミミがガチャガチャと扉を開けようとして。 開かないことに扉を叩いてくる。 「モニカーっ。お客様をお迎えする姿勢じゃなかったのは謝るからっ。開けてーっ」 「いえいえ。お邪魔なようなので帰らせていただくだけですから」 「邪魔じゃないーっ」 なんていうやり取りをして少し遊んでいたら、ジャックさんに呆れたように開けられてしまった。 「開いた…。モニカの意地悪っ。 ジャックさん、いらっしゃいませ。今日もすんごいイケメンですね」 ミミはにこっと笑ってジャックさんに挨拶をする。 「モニカさん、すみません。どうぞ、こちらへ」 私にはロベール様が声をかけてくださって、私の席のように食卓の椅子をひいてくださる。 キスするときにメガネをはずしていらしたからか、メガネをはずしていらっしゃる。 メガネも似合うけど、なくてもロベール様もイケメンだ。 優しそう。 「ありがとうございます、ロベール様。お招きありがとうございます。すぐ近くにいますが、まったく会うこともありませんね」 私は挨拶をしてから椅子に座らせてもらう。 「そうですね。ジャックさんとは毎日顔をあわせているのですが。モニカさん、なに飲まれます?一通り揃えてもらったのでなんでもすぐにご用意できますよ」 「ロベール様はホストではありますが、従者のような接待になっていらっしゃいますよ?」 私が言うと、ロベール様は少し恥ずかしそうに笑われる。 ミミに襲われてるんだろうなぁとそのお顔を見て、にまにましてしまう。 ミミの妊娠は早いかもしれない。 私の席の隣にジャックさんが座って、前の席にはミミとロベール様。 給仕は少しだけ侍女にしてもらったあとは、自分たちでできるからと下がってもらった。 ジャックさんだけ少し違うけど、私もミミもロベール様もお世話をするほうの人だった。 ロベール様はいいとこのお坊っちゃんではあるけれど、オリビエ様の従者をオリビエ様が王様になられるまで、ずっとしていらした。 グラスが空になると誰かがついで、食事の取り分けもできる。 いわゆるホームパーティーになるこういうことにはジャックさんは慣れていないようで、私がミミがお世話をするように食事を取り分けて飲み物をついでいる。 「やっぱり俺だけ場違いだな、こういうのは」 ジャックさんは苦笑いでこぼす。 「そんなことないですよー。これから慣れていきますよ。子供ができたら子供も一緒に。憧れていたんです、こういうの」 主催となるミミはうれしそうに少し酔った笑顔で話す。 「私もこういうホームパーティーに慣れてはいませんよ、ジャックさん。私はジャックさんが知っていらっしゃるように、子供の頃から城内にいるので。家は爵位を持ってはいますが、代々、城内の執務や内務を執り行って得たものですから、王族の社交界の場を設けることはあっても、家でする自分たちが参加するようなパーティーはなかったと思います。私は名前だけの貴族、ただの従者ですよ」 ロベール様はジャックさんだけがこういう場に慣れていないわけじゃないと話してくださる。 「それを言うなら私の家は田舎の貧乏極まりない家なので、ホームパーティーというか、まわりの平民の方々と収穫祭のようなことしかしていませんよ。野外でみんなでとれた野菜やお肉を食べるだけですけど」 今年もお疲れ様パーティーかもしれない。 社交界なんて縁遠い。 平民がまちがって爵位を持ってるだけのようなもの。 「じゃあ、ミミは?」 ジャックさんはワインに口をつけながら、ミミの話を聞こうと声をかけた。 「……それ、一番聞いたらダメなとこですよ、ジャックさん。私はどうせロベール様に釣り合うような生まれでもないです」 ミミは不満そうに誤魔化した。 「モニカのことはだいぶ知ってきたけど、俺はミミのことはほとんど知らないから。教えたくないのか?」 「……私、もともと孤児です。王妃様のお世話なんてとてもできない身分です」 ミミは誤魔化したものをはっきりと答えてくれた。 私も初めてミミの家の話を聞くことになる。
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