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「僕もモニカなら結婚すると言ってるだろう?シェリーはおまえの嫁にすればいい」
アンリ様は仰って。
「僕にシェリーを押しつけないでください。兄上がシェリーに刑をくだすことに反対されたから、シェリーは兄上のところにおくとしたのです。それにそういうことになってから聞いた話ではもともとシェリーは兄上のところに嫁ぐはずだったと。やり直してください」
「僕はモニカ一筋だ。他の女性に慈悲はかけてもモニカを諦めることはできない」
「兄上はずいぶん昔にフラれているんですから諦めてください。そもそもなんでモニカに、いつ目を留められたというんですか?」
「初めて会ったときからに決まってるだろう?モニカは可愛い少女だった。それがこんな美しく成長して…」
アンリ様は私に笑みを向けてくださる。
変わらなすぎてちょっとこわい。
ただ可愛いが美しいになって、ちょっとうれし恥ずかし。
「モニカはジャックが守りきれなかったので大きな傷を背中に持ちます」
オリビエ様はそのジャックさんの私と結婚しないと言えない弱味を出してきた。
「モニカっ?大丈夫かい?」
アンリ様は初めて知ったというように、私を心配そうに見てくださる。
やっぱり無理にジャックさんと結婚するよりは、アンリ様に転がったほうがいいと思う。
城から離れるのは淋しいけれど。
アンリ様ほど私を求めてくださる方はきっと他にいない。
アンリ様なら私を幸せにしようと努めてくださることだろう。
「申し訳ありません。アンリ様」
その声に気がつくとジャックさんが謝って頭を下げていた。
「そこに裏切り者はいないと信じきって離れていた俺のミスです。ですからモニカがいいのなら、俺はモニカを嫁として迎えます。…迎えたからってなにがあるとも思えないので」
ぼそっとジャックさんはつけ加えられる。
なんにもない結婚をするくらいなら、ジャックさんに頼むのはまちがっている。
私もなんにもなさそうだとその一言に思える。
ただ結婚するだけ。
「……モニカ、今度こそ僕のところへきてくれ。シェリーはいるけれど、僕とシェリーの間には今も昔もなにもない」
アンリ様はジャックさんの言葉を受けて、それならといったようにまた口説いてくださる。
その気になりそうだったのに。
「いえ。兄上にはシェリーを引き取る責任をもっていただきます」
オリビエ様がそんな口を挟まれた。
「オリビエ…?どうして僕にモニカを与えてくれないんだ?」
「モニカが兄上を選ぶなら与えますよ。
ほら、モニカ。最後の決断だ。どちらの兄上を選ぶ?」
オリビエ様はそんなふうに私に決断を迫られた。
うーんと少し悩んで、その質問の仕方がなにかおかしなことに気がついた。
「ジャックさんも兄と慕っていらっしゃるのですか?」
「ジャックも僕の兄上だよ。腹違いではあるけどね。よって、どっちと結婚してもおまえの位置はたいして僕には変わらない。兄嫁であり、縁戚だ」
とてもとても思いがけないことを仰ってくださって頭がついていかない。
どちらとの結婚を選んでも。
王家に入る。
つまりはこういうことっ!?
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