王妃たち

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王様が崩御されて、城内はドタバタだった。 お妃様は大きく泣きくずれられ、報せを聞いたケビン様とアンリ様が城内に戻られ。 王様をお見送りする式が盛大に執り行われ、多くの人が王様を見送った。 棺が王家の墓に埋葬されると、今度はオリビエ様の即位式が執り行われた。 ただ、オリビエ様が即位をされると、それまでの約束だったかのように国を動かしてきた人たちがばったばたと辞めていかれた。 執務長だったお婆ちゃんも、亡くなった王様についていくかのように辞めてしまって、新しい執務長、まだ若いほうのおばさん執務長がその席に就いた。 王様が崩御されたら国はとんでもなく大忙し。 人事交代しまくりで、内政ががらっとかわるようなことになった。 そんなところはだけど、私みたいな侍女が知るところでもない。 先の王妃様となる皇太后様が出家するかのように修道院へいかれ、王様のご家族が暮らしてきた私の勤め先の環境もかわりそうである。 「モニカ、君は僕のところへ…」 などとアンリ様は変わらず仰ってくださる。 この方の頭の中身はいったいどうなっていらっしゃるのか。 私は確かにアンリ様に気のある素振りを見せてしまったかもしれない。 それはもう忘れていただきたい。 久しぶりにお話できることになって、そのお顔を見ても、もうわきゅわきゅはしない。 今は特に先が不安になっているから、わきゅわきゅなんてできたものでもないけれど。 「アンリ様はまだ嫁を迎えられないのですか?」 「モニカ、僕の話はどこに素通りしているんだい?君を迎えるために空席にしているだけだよ。亡き父王にはシェリーをすすめられたけれど断って、シェリーは兄上の嫁となった。 君がいないと淋しいよ、僕は」 この方の口はいったいどうなっているのか。 その頬を摘まんで引っ張ってみたい。 ケビン様には似合いそうにないけど、アンリ様なら確かにシェリー様とお似合いになれそうだ。 とても頼りないお二人ではあるから、しっかりとした従者がついてくれればいい。 断る意味がわからない。 私のための空席ってなんだ?みたいな。 「アンリ様なら慈悲を求められ、女性を抱かれているでしょう?」 それを言ってみると、どこか焦った様子を見せられる。 そんなの聞かなくてもわかっている。 だから、それはなんだ?その口はどうなってる?となるわけで。 私だけのアンリ様だったなら、たとえ愛人でも転がりこみたかった。 それを思うと私のほうがひどくつらい。 ないから愛人なのに求めてる矛盾。 溜め息にしかならない。 「モニカ、君がいれば他に慈悲をかけたりはしない」 「アンリ様のお子様、きっと多くいらっしゃるでしょうね」 アンリ様が認知されてるかは知らないけど。 アンリ様は頭を横に振って焦ったように否定をくださる。 ないけど、やっぱり私はアンリ様が愛しい。 一生、これでいいやと思える。 おばさんになってもアンリ様に口説かれればいいなと思う。
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