王妃たち

9/11
前へ
/262ページ
次へ
オリビエ様に汚されても、私たちの天使は癒しだった。 汚されたのなら、アニエス様にはアニエス様にそっくりな王子か姫をと望みたいところ。 そのお世話をする係りはまた取り争うようなことになりかねないけれど。 天使が産む天使を望んで、マリー様やカトリーヌ様に対するよりもせっせと身を尽くす。 オリビエ様に毎日通われるアニエス様がどこか自慢だった。 そのままオリビエ様に愛されていらっしゃればいいと思っていたのに。 国内は決して平和なものでもなく。 反乱かと思われることが起こり、オリビエ様は安定に自ら出向かれた。 そしてアニエス様にはなぜかシェリー様が教育係としてあてられた。 シェリー様を教育係とするくらいなら、きっと私のほうが教えられるとも思うくらい頼りない方。 えぇーと思っていたら、数日たって戻られたオリビエ様とシェリー様はどこか親密なことに。 オリビエ様の頬を叩いて、アニエス様がいらっしゃるでしょうと言いたいのは堪えていたのだけど。 オリビエ様がアニエス様の部屋に通われることはなくなった。 オリビエ様を捕まえて、アニエス様をーっと叫んでしまいたくても相手は王様。 王子様だった頃のように一緒にお茶を飲めと仰ってくださるほど近くにもいない。 アニエス様はまるでオリビエ様に捨てられたかのように、夜のお世話をすることはなくなった。 マリー様やカトリーヌ様はある。 アニエス様をーっと叫んでしまいたいけど、相手は王様。 汚すだけ汚して、なんだそれはというものを見せられて、どこかオリビエ様に不信感。 それは序章ともいえるものだった。 アニエス様はそのままオリビエ様に構っていただくことはなく、城内の片隅に部屋を与えられて生きているだけのようなものになっていった。 それどころかマリー様がいきなり祖国へ追放となられ、オリビエ様の妃がかわりにきたと思ったら増えていく。 しかも城内の侍女だけでは妃の世話はできないと誰かが言ったのか、知らない侍女も増えていく。 住み心地のよかった場所がとんでもないことになってきた。 マリー様がいらっしゃれば、すべての妃をまとめてくださるのだろうけれど、マリー様はいらっしゃらない。 カトリーヌ様は放置されていて、新しくきた妃も侍女も好きにしてくれて、侍女同士でも半分ケンカになることもある。 荒れた城内。 癒しの天使、アニエス様は薄汚れたドレスを身に纏われて大きくなっていく。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加