*納棺司*①

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*納棺司*①

プッ 「はー」 【ツクモ!電話にはちゃんと出ろと何回言っている】 「別にいいだろ。十夜なんだし、どうせ来いっていうクセに」 【ああ、会わせたい人がいる】 「あ、またサリー達?」 【いや違う。今は私服で大丈夫だから、そのまま事務所に来てくれ】 「めんどくせえなあ・・」 最寄り駅よりタクシーに乗り十夜の斎場へ向かう。 「とおやー。遠いー!」 バターンとドアを開けツクモがドカドカと入って来る。 「事務所とはいえ静かに入れ!」 「あらツクモ君久しぶり。いまおいしいお茶を出してあげる」 「ありがとう長谷川さん。今日も素敵なメイクでびっくりよん」 「で、何だよ」 十夜は机の上の書類に目を通し押印してから、奥の部屋に入り小柄な女性を連れてきた。 「堤明日見さん。納棺司だ」 「あ、ライバル?」 「字が違う。彼女のご実家は棺桶製造だそうだ。だが今は多様化してきているだろう?」 「まあ、いろんなのがあるわな」 「彼女はエンバーマー棺を作りたいらしい」 「今までもあるじゃん」 「いま主流なのは観音開きで上半身までのものだろう。彼女が目指しているのはアクリル棺なんだ」 「アクリル棺?」 「まあ童話などでお姫様が入っているガラスの棺みたいに全身が見られるものだ」 「ふーん。見ねえなあ、そんなの」 「ああ、だがこれでまたエンバーマーに対して何か出来る事なのではないかと思い、うちで勉強してもらおうかと」 「ツクモが言った通り、確かに需要はあまり見込まないかもしれない。だから普段はうちでアルバイトをしてもらう事にした」
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