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「く、國雄…。」
成都が目の前の親友の名を呼ぶと、國雄はゆっくりと彼へと近寄って口を開いた。
「…俺がなんで怒っているかわかる?」
國雄が成都に詰め寄って、静かな声で言う。
「それは…僕が勝手にいなくなったから?」
成都は震える声で返す。
「そうじゃなくて…俺は流れにまかせて成都を女の子たちに会わせようとしたことは反省してるんだ。だから、そこじゃない。」
國雄が言うと、その場にしばらく静寂が訪れた。成都の近くにいるアベルが、気まずそうに立ち尽くしている。
初夏の夕暮れの空が、甘味処の出入り口に立つ三人を見下ろす。三人の身体に夕陽の暖かなだいだい色が照らす。
その数十秒後、國雄は俯いて大きく口を開いた。
「俺より美男の子と一緒にいるとかどういうつもり!?」
「ええ?! そっち?!」
成都は國雄の想定外の発言に呆気にとられていた。
成都はアベルの方へ目をやると、口を開く。
「アベルさん、この子が僕の親友の子です。」
成都が國雄を手で指して言った。
「この子が?」
「はい。――國雄、挨拶して。」
「あ、うん。――はじめまして。村上 國雄だよ。よろしくね。アベル君。」
國雄はとびっきりの笑顔でアベルに自己紹介をした。
「よろしく、國雄君。僕はアベル・レ・サヴォイア。フランスから来たんだ。」
アベルは自分の胸元に右手を添えて微笑み、國雄に自己紹介をした。
その後、三人は仲良く会話しながら途中まで一緒に帰ったのだった。
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