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緊張した笑顔に、きちんとスーツを着こなしている、ロマンスグレーの祐太郎が写っていた。
もちろん歳はとっていたが、昔の面影が残っていて、ゆいにとってはいつまでもステキな王子様に見えた。
「ゆいさんの写真も撮って良いですか?祖父が欲しがっていたので」
「恥ずかしいわ。とても写真写りが悪いのよ」
頬を染めて恥ずかしがるゆいが可愛かった。
きっと昔から可愛らしい人だったんだろうと孝太郎は微笑んだ。
それでもスカイツリーをバックにゆいを撮ってあげると、1枚目から納得のいく写真が撮れた。
歳を重ねても、それだけゆいが魅力的だったのだろう。
「祖父もきっと喜びます。祖母が去年亡くなってから、本当に弱くなってしまって。この写真を見れば、きっと元気になると思います」
孝太郎が言うとゆいは寂しそうな顔になった。
「そう。奥様を亡くされていたのね。私は夫の最期を看取った側だったけど、男性は妻が先に亡くなると弱くなるとよく言うものね。でも、ずっとお元気でいてほしいわ」
祐太郎を心配してくれて孝太郎は嬉しかった。
「チケット買い足してきます。お一人だと思ったので、知英さんの分、買ってなかったので」
孝太郎が買いに行こうとすると、知英は孝太郎を呼び止めた。
「あの、ご迷惑でなければ、2人でスカイツリー登ってくれませんか?おばあちゃん、あなたのおじいさんとのデート楽しみにしてたんです。おじいさんの代わりに2人でデートしてくれませんか?」
孝太郎は驚いたが、フッと優しい顔で笑った。
「ゆいさん。僕で良ければ、祖父だと思ってお付き合いいただけますか?」
孝太郎の顔が祐太郎と重なって、ゆいは懐かしくて涙が出そうになった。
「よろしくお願いしますね」
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