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スカイツリーから地上に戻り、ゆいは満足気に孝太郎と知英を見て、2人の手を握った。
「ありがとう。本当にありがとう。祐太郎さんには会えなかったけど、祐太郎さんとの楽しかった時間をまた過ごせたわ」
とびきりの笑顔が、眩しくて可憐だった。
「孝太郎さん。祐太郎さんを大切にしてね。今日は本当にありがとう」
ゆいは微笑みを絶やさない。この笑顔を祖父に見せてあげられないのが、孝太郎には残念でならない。
3人で昼食を取り、スカイツリー駅にやってきた。
「また、祐太郎さんにお手紙書きます」
ゆいはそう言って、満ち足りた微笑みのまま知英と共に帰っていった。
孝太郎も新幹線で、大阪へ帰るために東京駅に出た。
ゆいの手の温もりが掌に残っていた。
叶わなかった祖父の愛を垣間見れたことが嬉しかった。
スマホに知英からメールが入った。
【おじいさんの写真ありがとうございました。祖母もとても喜んでいます。孝太郎さんが来てくれて、本当に良かったです。本当に今日はありがとうございました】
孝太郎もお礼の返事を返した。
充実した1日だった。
大阪に戻り、祐太郎にゆいの写真を見せると、祐太郎は慈しむようにゆいを眺めていた。
スカイツリーでの出来事を語ると、年甲斐もなく孝太郎に嫉妬も見せた。
ゆいと触れ合う事は出来なかったが、話を聞きながら祐太郎も満足そうに笑顔を絶やさなかった。
それから祐太郎とゆいの手紙のやり取りはしばらく続いた。
祐太郎もゆいもその手紙だけが、余生の楽しみになっていた。
孝太郎は祐太郎のために、喜んでゆいへの代筆を続けた。
だがある日、ゆいの手紙の文字が変わった。
とても乱れた筆跡だった。
体調を崩したのだろう。孝太郎もとても心配になった。
そしてまた、筆跡が変わった手紙には、知英から孝太郎への手紙が綴られていた。
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