落とし物にはご注意を

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落とし物にはご注意を

 古代文明の遺跡や洞窟、地下などに広がる未知の迷宮。いわゆるダンジョンには、多くの冒険者たちが毎日、様々な場所で挑戦している。そんな彼らがダンジョン探索において、一番頭を悩ませていることを、みなさんは知っているだろうか。ダンジョンに潜む魔物?多種多様なトラップ?いいや違う。彼らの一番の悩みは、ダンジョン内で“落とし物”をしてしまうことだ。  これは、その落とし物を回収することを専門とする冒険者、リオ・デュークの物語である。 「はい、落とし物はこれで合ってますか?」  そう言うとリオは、目の前の若い女性冒険者に、一つのイヤリングを渡した。 「わぁ~これです!ありがとうございます!」 女性は両手で丁寧に受け取りながら、いとおしそうにイヤリングを見つめていた。 「リオさんには、感謝してもしきれません!」 女性のキラキラした視線に少し照れつつ、リオはいつもの客への忠告を言う。 「それは良かったです。ですが、次からは気をつけてくださいね。ダンジョンを出る前はちゃんと探索(サーチ)魔法を使うこと。覚えておいてくださいね」 「わっかりました!」 女性はビシッ!と元気よく敬礼すると、報酬を渡し、もう一度リオに頭を下げてから、ギルドの建物を去っていった。一仕事終え、ホッとするリオ。落とし物回収を専門として一年以上経っても、やっぱり仕事終わりが一番幸せだなぁ……としみじみ感じていると、後ろから声をかけられた。 「お疲れ様です、リオさん」 そう労ってくれた彼女は、ギルドの受付兼事務のエニー。種族は猫系の亜人である。可愛らしいルックスとスタイルの良さ。淡い水色の美しい毛並み。そしてちょこっと出た三角の耳が多くの男性冒険者のハートを掴み、今やギルドのアイドル的存在である。リオにとっては、新米冒険者の頃からお世話になっている恩人でもある。 「いつもありがとうございます。エニーさん。丁度仕事が終わったところなんですよ。」 「え!そうだったんですか……」 エニーは耳をぺたんと閉じ、申し訳なさそうな表情を浮かべた。 「あの、どうしたんですか?」 「すみません。これを見てくれませんか」 と渡された羊皮紙を見て、思わずリオは笑ってしまった。それは、新たな落とし物回収の依頼であった。
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