激闘

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激闘

 アルヒ城跡は、幾つか部屋のある真っ直ぐな廊下が、地下三階まで続いているだけという、非常にシンプルな作りのダンジョンだ。リオたちは各階にある部屋を一つ一つ確認しながら、最終フロアの地下三階まで来たのだが…… 「おかしい……何で魔物が出てこない?」 「ああ、確かにな」 リオの疑問に、ルリエッタも深く頷く。普通ならここまで来るのに二、三回は魔物と遭遇しているはずだ。だが、今日に限っては魔物どころか虫一匹出てこない。どう考えても異常だ。リオは胸に一抹の不安を抱えながら、ゴール地点である巨大倉庫までたどり着いた。ドアに近づくと、ミスリル発見器が僅かに反応した。 「ルリエッタさん!ミスリル発見器が反応しました。どうやらレイピアはこの倉庫の内部にあるようです」 「そうか!よかった……」 ルリエッタはレイピアがあったことに安心したのか、胸を撫で下ろした。 「とはいえ、まだ安心はできないな。例のミノタウロスのこともある」 「ええ。気を引き締めて行きましょう」 二人は意を決して、その分厚い扉を開いた。  「グルゥゥゥアアアアアアアアッ!!!」 全身が揺さぶられるような咆哮ともに現れたのは、例のミノタウロスだった。三メートルはある巨大な体格。鍛え上げられた筋肉。鋭い牙を持つ顎からヨダレを垂らし、リオと同じくらいの刀身の剣を担ぐその姿は、正に化物そのものだった。 (コイツが例のミノタウロスか。ヤバいな……) あまりの迫力に、思わず冷汗をかくリオ。だが、ここで引く訳には行かない。ミスリル発見器は、ミノタウロスの後方を指し示している。 (仕方ない。やってやるか!) リオは全身に魔力を巡らせ、戦闘体制をとる。 「ルリエッタさん。あのミノタウロスの後方に、あなたのレイピアがあります。俺がアイツを引き付けている間に、急いで回収してください」 「しかし、それはあまりにも」 「いいから早く!」 「くっ……すまない」 ルリエッタが弾かれたように動き出すと同時に、ミノタウロスも猛烈な勢いで襲いかかって来た。 (させるかッ!) ミノタウロス目掛け、リオは光系魔法、《フラッシュインパクト》を放つ。 「グルゥアアッ!」 スタングレネード並みの光量をもろに浴び、のた打ち回るミノタウロス。その隙を逃さず、リオは一気に距離を詰める。視界が封じられても本能で察知したのか、ミノタウロスが殴りかかってくる。だが遅い。懐に飛び込だリオは回転弾倉式拳銃(リボルバー)抜き撃ち(クイックドロウ)し、弾丸のボディーブローを見舞う。予想外の攻撃をくらい怒り狂ったミノタウロスは、その剛腕に物言わせリオに向け滅茶苦茶に拳を降り下ろす。 「チイッ!」 転がるように拳の雨を逃れつつ、リオは弾を再装填(リロード)。すぐさま立ち上がり、顔目掛け更に発砲。六発全て右目にに命中させる。またしても攻撃をくらったミノタウロスは、右目の出血などお構い無しに、全力のフルスイングでリオに斬りかかる。 「それを……待っていた!」 リオにその刃が届く直前、ミノタウロスの視界から彼が消え、突如ルリエッタが現れた。始めから持っていたレイピアと、先ほど見つけたミスリル製のレイピアを十字に構え、寸でのところでミノタウロスの大剣を受け止めている。 「よくも私の仲間を傷つけてくれたな。貴様には代償を払ってもらうッ!」 魔力で身体能力を限界まで強化し、二本のレイピアでミノタウロスの大剣を弾き飛ばす。体勢が崩れ無防備になったミノタウロスに、ルリエッタは流星の如く突きを繰り出す。 「ハァアアアアアアアアアアアアッ!!!」 何とか攻撃を止めようとするミノタウロスだが、極限まで高められた速さを持った刺突に、身動きが取れない。やがて魔力が尽きかけそうになったルリエッタは、最後にその胸を切り裂き、素早く離脱する。 「今だ!」 ルリエッタが叫ぶその先には、完璧にミノタウロスの背後を取ったリオがいた。前方に構えたその左手には、最上級光系攻撃魔法の魔方陣が展開されていた。 「《サンクチュアリ・クロス》ッ!!!!」 黄金の光を纏った巨大な十字架が、ミノタウロスに放たれる。その聖なる輝きはあの巨体をも呑み込み、世界全てを照らすかのような閃光と共に、一片も残さず消滅させた。
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