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 オリオンは、ポセイドンの子で、巨人にしては珍しく美少年でした。南の森の中のオアシスで、かわいらしいウサギや大人しいヤギなどに愛を語り、誰とでも明るく接しました。南の森に住んでいる人はみんなオリオンが好きでした。もちろん人間や巨人も、みんなオリオンが大好きです。  それに嫉妬したヘビが、「臆病者のオリオンは、美しいだけで何もできないに違いない」と囁いたので、オリオンは反発してこう言いました。 「天下には自分ほど腕の良い狩人などいやしない。足の速い鹿だって、獰猛なクマやライオンだって、僕に掛かれば赤ん坊のようなもの。俺から逃げられる獣はいないのだ。」  それを聞いて、周りの女性たちはうっとりした顔で、オリオンにつきはべるのでした。面白くないと思ったヘビは、ご主人様に報告しようと思いました。  ヘビのご主人様はドラゴンです。ヘビは、なるべくオリオンが悪者に聞こえるように、一生懸命に話しました。 「南の森のオアシスに、オリオンという者がおります。オリオンはどんな動物でも捕らえられるのだと言って、女共を騙し、はべらしてございます。西の森というものはご主人様のさらにご主人様が慈悲をかけておられるために、栄えているというのに、あの者は大変に傲慢でして、感謝の気持ちもございません。ご主人様、どうか、西の森の様子を見に行ってはくださいませんか?」
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