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オリオンの亡がらを見つけたアルテミスは、不思議と、兄オリオンへの怒りも矢を射った自分への後悔も抱きませんでした。そこにあるのは、ただ、もう動かない友・オリオンという現実だけでした。 足下にサソリが、申し訳なさそうに縮こまっているのが見えました。もし、とどめをさしたのがアルテミスではなく、サソリだったとしたら、アルテミスの気は少しは晴れたのでしょうか。 いいえ、そうなればきっと、サソリに何か復讐をしたいと思って、心は怒りに捉われていたことでしょう。 アルテミスはオリオンを抱きしめました。 「愛するオリオンよ。貴方は私を恨むでしょうか。恨むならば私一人にしておきなさい。きっとこの哀れなサソリは、本当は貴方を殺すことなどできなかったでしょう。それから、どうか、私の兄を恨まないでください。私の兄も、貴方を直接手にかけることはできなかったでしょう。貴方を殺したのは、私なのです。私が一人で貴方を殺したのです。」
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