厄神蒐集家 (2)〜血まみれ紗江ちゃん

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平日の新橋の夜は早い。 暗くなる前にあっという間に町には客引きの姿が現れて酔客を誘う。 拝み屋の吉祥は、大ぶりのホッケをつついていた。 「それで、その女子高生には会ったんすか?」 「いや、お客様相談室から連絡があったのが昨日だからまだなんだ。明日の夕方会う予定で。」 「それにしても急な話すね。3日後に彼氏が呪い殺されるとか…普通呪いの期限って7日くらいはくれるもんなのに。」 招き猫商事は、御守りグッズの販売や拝み屋、占い師の派遣などをしている商社である。 そのお客様相談室には時折、商品の御守りについてではなく、呪われたとか、UMAを見た、といった相談事も寄せられる。 相談事の内容によって専門家を派遣し、 商売になりそうなら、いつもニコニコ現金払いで対応する。 「おおかた、どこに相談しようか迷ってるうちに日にちが経ったんだろ。」 「ホントに明日はフジワラ先輩一人でいいんすか?」 吉祥は大きな目でこちらを興味津々に見つめてくる。 「おっさん二人が会いに行ったら向こうもびっくりするだろ。ひとまずわたし一人で行ってくるよ。」 「おっさんってやめてくださいよ~こう見えて俺まだ20代すよw」 いや、吉祥の見た目は充分若い。 さらさらの色素の薄い髪に白い肌、大きな瞳で人懐こい表情、誰しも気を許す風貌をしている好青年だ。拝み屋には見えない。 「まあ、本当は吉祥にお願いしたいところだけど、最初の聞き取りはわたしの方でしておきたいんだ。」 吉祥はうなずくとメニューの高級舟盛りを会社経費で落とせるかについて熱い議論を始めた。
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