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真円からほんの少し欠けた月が夜空に輝く。
七月一六日。毎年この日に月を見ては、必ず貴女のことを思い出す。
もちろん、僕は貴女のことを片時だって忘れたりはしないけれど。でも、今日だけは特別。
四年前の今日は、貴女がいちばん、綺麗だった日だから。
貴女は確かに、あのときより美しくはなっていると思う。
顔立ちも身体つきもあのときより大人びて、いっそう魅力が増している。
そしてお洒落な衣装に身を包み、素敵な化粧を施され、今もきっとどこかで輝いている。
でも、そうではない。
あのとき、僕のためだけにそこに立った貴女は。
あのとき、僕のためだけにことばを紡ぐ貴女は。
あのとき、僕のためだけに泣いてくれた貴女は。
煌々と輝くあの満月よりも、綺麗だった。
そして僕は――。
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