第2話 電能少女「春風 美音」現る

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第2話 電能少女「春風 美音」現る

放課後のチャイムが鳴り、下校する生徒や部活の準備をする生徒達でグラウンドがにぎわる中俺は、鼻の下を伸ばしニタニタと笑いながら佐伯加奈の後を付いていくことにした。 俺の頭の中では、彼女とイチャイチャする妄想シーンを描いていた。 加奈は、運動部が練習するグラウンドを横切り俺を人気のない体育館の裏手に連れて行った。 「一体どこに行くんだよ? 」 「恥ずかしいからちょっと人がいないところへ行きたいんだ」 俺はその話を聞いて更に如何わしい展開を想像してしまい。この時俺の顔面は、ゆで蛸の様に赤く染まり鼻血を垂らしていた。今後の展開に興奮しながら言われるがまま加奈の後を付いていくことにした。 人気がなく辺り一面、そよ風に揺られる雑草が生い茂る体育館の裏手、そこにある1本の葉桜の木が生えている場所へ着くと加奈がはにかんだ笑顔で俺こういった。 「ちょっとここで待っててね」 そう言い残し加奈は、茂みの奥へ走っていった。俺は近くにあった少し古びたベンチに座り興奮しながら貧乏揺すりを激しく行いながら彼女を待つことにした。俺がニタニタとした顔で待っていると俺の目の前に金髪、ピアスにタトゥーを入れた腕でタバコを吸いながら近づくいわゆる頭が悪そうなDQN3人組が現れた。 「おい、てめえが青葉未来って奴か? 」 DQNの一人が高圧的な態度で俺の名前を聞いてきた。俺は平常心を装うが震えた唇とうまく回らない呂律で答える 「そうだよ。俺が青葉未来だ」 俺は、更に緊張し震える手と緊張のあまり激しく揺らす足を抑えながら応えた 「貴様みたいなやつが俺の彼女にちょっかい出しやがって」 すると加奈が、悪意を持った笑顔で近づいてきた。 「ねえタクちゃん。こいつ私に対してこの前襲い掛かろうとしたんだよ」 「てめえ根暗の分際で俺の彼女に手を出そうなんて10万年早いわ」 「私、この彼と付き合ってるの。それに、あんたみたいな陰キャ全然タイプじゃないし。私と付き合うならそのダサいカッコ何とかしなよ。10万年早いわ」 俺は、つかさず彼女に質問を投げかけた 「何で、俺が財布を無くして困っていた時優しくしてくれたんだよ」 「決まっているじゃない。ただの票集めよ。でもこの前の私に対する行動で考えが変わったの。このままあなたを野放しにすると私の身の危険を感じたからあなたに罰を与えようとね」 いつもと違う彼女の本性を知ってしまいショックを隠し切れない俺だった。 加奈の彼氏は、俺の胸ぐらをつかみかけた。俺の緊張はピークに達し自分の震える手の爪を震える口で小刻みに噛み砕き指先からは、深爪により赤く血がにじむまで噛んでしまっていた。しかしそんなことは気にせず何とかここは穏便にやり過ごそうと加奈の彼氏に冷静になってもらうように説得するが…… 「ごめんなさいこの手を放して冷静に話を聞いてください…………  クズ」 「てめえ今、クズって言ったろ?」 「ごめんなさい、決してあなた様の外見が頭がよさそうに見えずどちらかというと世間一般で言うと頭が悪いクズというお言葉が最高の誉め言葉かなと思いまして、嘘偽りなく包み隠さずお伝えしたつもりなのです。」 「おうおうおう、言ってくれるじゃねえか」 「なのであなたみたいなおつむが少し足らないお方に対しては、正直に分かりやすくお話ししてあげた方がお互い友好関係で今後もいられるかと思いお話しした次第ですです」 俺は緊張のあまり頭が真っ白になり自分で必死に弁解をし説得をしたつもりだったのだが俺が話すごとにクズたちの顔が般若のごとく変わって行く様が映し出されたのだ。 ちなみに俺は、緊張してしまうと嘘が付けず本心を言ってしまう癖がありそれを悪口だと考えることが出来ないいわゆる 「KY」 「サイコパス」 「アスペルガー症候群」 的な要素があった。 「青葉未来、てめえに未来はねえぜ。ここでくたばってもらうぞ! 」 すると、胸ぐらをつかんでいるクズは、今にも殴り掛ろうとする勢いだった。俺は遂に殴られる覚悟をしぎゅっと強く瞼を閉じ歯を食いしばった瞬間に 「タクちゃん、とりあえず暴力はやめて。暴力がバレたら私のイメージや生徒会長へのステップアップへ障害になるから」 加奈の一言を聞いたクズは、俺を勢いよく振り払い俺は、力強く地面に尻もちをついた。 「まあ、加奈が言うなら仕方ないがよし、そうしたら貴様、名誉棄損と慰謝料として来週までに20万用意しろ! 」 「そんな…… 美人局だ」 「来週、加奈がここへ連れてくるからきちんと用意しろよ。もし用意できなかったら今度こそ貴様の未来はないからな。それと警察や教師に言ったら貴様を二度と学校へ来れないようにしてやるからな」 そう言い残しクズどもは、談笑しながら正門の方へ去っていった。俺は憧れの女性が 「DQN」 だったことと20万の大金を要求されたことにショックを覚えその日は、身体をふらつかせながら自宅へ帰ることにした。 普段なら帰宅してすぐにパソコンの電源を入れてネット配信をするのだがこの日は、あまりにもショッキングな出来事が起きてしまう。空が闇に染まり出し俺の部屋や心も闇に包まれた。何気に携帯をいじりうっすらとひかる端末の光だけが寂しく俺の部屋と心を照らしていた。 翌日俺が普段通りに学校へ登校すると加奈は、普段通りの笑顔で俺に挨拶をするようになった。そしてある日の放課後加奈がすれ違いざまに 「あなた、もし私の生徒会長への道を閉ざしたらどうなるか分かっているでしょうね? ここは素直にタクちゃんに従うのが賢明よ」 加奈は、俺に一言耳元で忠告をするとそのまま友人と合流し生徒会室へと向かっていった。 俺は、つくづく女運のなさと自分自身の情けなさでその日も落ち込んだ気持ちで下校した。 刻一刻と期日が近づいていき自分自身を負いこむ様になってしまった。 配信を辞めて6日目、久しぶりにパソコンの電源を入れるとリスナーからの心配するコメントが多数寄せられていた。俺は、顔も知らないリスナーのコメントに少し勇気を貰うことが出来、久しぶりに生配信をした。一方その頃全国で季節外れの大嵐が発生し雷や大雨洪水警報などが気象庁から発表されていた。 「え~温暖化現象に伴う全国で発生している雨雲は、とてつもない猛威を振るっている模様です。本日の夜には東京でも大雨や暴風、雷に注意をしてください」 この日は、久しぶりの配信でリスターたちと楽しくやり取りしていたため普段より遅くまで生配信を行っていた。最近嫌な事がありすぎたので少しでも美音やリスナーと触れることで心の支えになっていたのだ。時計の針が深夜1時を過ぎた頃、部屋の外では、雨足が強くなり次第に暴風により部屋の窓をノックするような音が鳴り今にもガラスが割れてしまうのではないかと言う勢いだった。 俺は、そんなことは気にせず続けた。なぜなら明日は、俺の命日になると思いこれが最後の配信になるかと言う思いがあったからだ。美音が世直しお悩みコーナーで決め台詞を言うクライマックスの瞬間に。 ドーーーン 突然近くで大きな雷が落ち周辺の住宅が全て停電し更に俺のパソコンがショートしてしまった。漆黒の闇に包まれ打ち付けられた激しい雨風の音だけがむなしく響いた。 俺は、何度も電源を入れようと試みるが落雷でやられたせいで電源はおろか電気も付けることが出来なかった。 「所詮俺の人生なんてこんなもんなんだ。俺に神様がいたら助けてくれよ。まあどうせいないけどさ」 歯切れの悪い幕の降ろし方にショックを受けたが覚悟を決めその日は、寂しく漆黒の中床に就いた。その後何度も雷が落ちる音が聞こえたが気にせず俺は深い眠りについた。 翌朝、まぶしい日差しと元気な雀の鳴き声で目を覚めた俺は 外は、嵐が過ぎ去り清々しい朝を迎えていた。しかし俺の心は、曇天だった。 「今日で俺は、最後だ。父さん母さん今までありがとう…… 」 しみじみとした気分で起きようと寝返りをうつと………… 「ムニュ」 と俺の両手に柔らかい感触の膨らみを捉えた。俺は恐る恐る顔を反対方向へ向けるとそこには、静かな寝息を立てながら可愛い寝顔で横になっているバーチャル世界のキャラ「春風 美音」の姿があった。 「え? どういうこと? 」  
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