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第3話 お仕置きの時間ですよ
すーすーすー
俺は、初めて女の子の寝顔を間近で見ることとなり心拍数は頂点に達していた。今まで女の子の身体を触ったことや一緒に寝たことすらない「童貞野郎」には、あまりにも刺激的な出来事だった。
「しかし、こうして間近で見るとやっぱり可愛いな」
俺は、自分でデザインしたキャラの上出来さに自賛しつつ心の中である考えを浮かばせていた。
「やっぱり俺が描いたんだからチョッとくらいキスしても罰なんか当たらないよな」
俺は、勝手な解釈で童貞を打ち破るための1つの壁を超えようと寝ている隙をついてキスをすることを決断した。早速美音の顔へゆっくりと近づけていく。
この時俺の心臓は、今にも爆発しそうな勢いだった。徐々に近づけ美音の温かく甘い香りの息が鼻の先に当たると更に心拍数がUPした。
「これで俺は、大人の階段を上って童貞とおさらば出来るんだ。グッバイ童貞」
すると次の瞬間、美音の瞼がゆっくりと開きだし俺は、美音と目を合わせることとなった。美音は、一瞬無表情になり口をとがらせて顔を赤く染めたアホ面の俺を見てハッと我に帰ると…………
「おのれ痴漢め! 」
身の危険を感じた美音は、俺に対して身体から放出した電撃を食らわせてきた。俺は、美音が放った電撃を食らい勢いよくベッドから転がり落ちてしまった。
「この変態野郎め、私が寝ている所を襲うなんて卑劣極まりないわ」
美音は、勢いよくベットから飛び上がり敵意むき出しで体中から電流を放とうとしていた。俺は、痺れて自由に動かせない身体で必死に美音に対し弁解をする。
「待ってくれ、俺は、変態行為をしようとしたわけじゃない」
「嘘つくな、あなたのそのひょっとこの様なアホ面、絶対変態としか言えないわ」
俺は、慌てて近くにある鏡を見てビックリした。先ほどの電撃で顔がしびれてしまい。美音にキスしようとした時の表情で固まっていた。
「これは、お前が急に電撃を食らわせてきたせいだ。」
「覚悟しなさい。春風美音が変態を退治するわ」
「待ってくれ。俺はお前の生みの親、青葉未来だ」
俺が、痺れで呂律が回らない口で原作者だということを必死に説明すると美音は、冷静になり攻撃をやめた。
「あなたみたいな変態が原作者? まあとりあえず話を聞くわ」
俺は、痺れが収まり何とかまともに会話ができるようになると今までの配信者としての経緯などを説明した。しかし俺には1つ疑問に思っていることがあった。
「それより何でお前が、この世界にいるんだよ」
すると美音は難しい表情をしながら、覚えている範囲で話し出した。
「実は、昨日私がいつもの様にDQNと戦っていると急に強い衝撃波を食らい吹き飛ばされたのよ。そして気づいたら真っ暗な場所を一人叫びながら歩いていると強烈な睡魔に襲われてその場で気を失ってしまって気づいたら変態に襲われたってことよ」
「いやいや、変態じゃないから………… 」
とりあえず、お互い経緯を話し終え俺がふと机の上に置いてある時計に視線が向くと時刻は八時近くになっていた。俺は、急いでクローゼットから制服を勢いよく引っ張り出し着替えた。すると美音が
「とりあえず帰りたいんだけどどうすればいい? 」
急いで制服に着替え終わった俺は、とりあえず昨晩の雷の影響を受けたパソコンの電源をダメ元で入れてみると奇跡的に電源が入った。
「よっしゃー! パソコンは無事だった。」
俺は、そのままいつもの動画配信サイトにログインすると昨日の配信を心配する沢山の視聴者からのコメントやメッセージがBOXに溜まっていた。俺は、考えた挙句あることを提案した。
「とりあえずログインできたしもしかしたらこのままパソコンの中に入って帰ることができるんじゃないか? 」
その話を聞いた美音は、早速パソコン画面に頭をつけてみるが…………
ゴンゴンゴン
「戻れないんですけど………… 」
「諦めるしかないかな」
美音は俺の他人事のような発言を聞いて見る見るうちに表情を強張らせた
「この嘘つき! 」
美音は、強力な電流をパソコンに放ち次の瞬間パソコンは大きな音を立て爆発して黒焦げになってしまった。
「俺のパソコンが………… 」
俺は、黒焦げになったパソコンを抱きながら号泣した。しかしすぐ我に返り急いで学校へと向かった。すると美音も後ろから一緒についてきた。
「何でお前も来るんだよ」
「仕方ないでしょ。嫌だけど今はあなたしか頼る人いないんだから」
俺は、いつも正門で竹刀を持って見張り番をしている強面の体育教師の横を何事もなく通過することが出来た。遅刻した生徒を見たことがあるがこいつは1分でも遅刻した生徒に対して竹刀を振り回すため危険度は野生のマウンテンゴリラと一緒だ。
「とりあえずこれから学校だから夕方まで近くで待っていろよ。」
「ちょっと待ちなさい」
俺は、美音の叫び声を無視し急いで階段を駆け上がり自分の教室へ向かった。
しかしその時美音は…………
「あの変態未来。私をこんな所へ置いて行って。許さないんだから」
美音が不機嫌そうな表情で正門前をうろついていると背後からあの体育教師が美音の肩を掴んで声をかけた
「おいお前見かけない制服だがどこの生徒だ? 」
すると美音は華麗に身体を半回転させ渾身の力を込めて体育教師の顔面に回し蹴りを食らわせた。すると体育教師は、勢いよく壁に叩きつけられた。
「きゃ~この変態ゴリラ野郎め今度触ったら蹴り飛ばすからね」
「いや………… もう蹴っていますから………… 」
一方俺は、そんな出来事を知らず急いで自分の教室へ急行した。
「はあはあはあ何とか間に合った」
俺はフラフラになった身体で自分の席に座ると額のかいた大量の汗をハンカチで拭った。その後は何事のなくいつもの様に授業が始まりその日も1日の授業が終了した。
「そういえば美音のやつどうしているだろう? 」
俺は美音の事を心配しつつ教材をカバンにしまいいつもの様に帰宅しようと教室を後にすると後ろからポンと肩をたたかれる感覚を感じふと振り向くとそこには、悪意に満ちた笑顔で俺の事を見つめる佐伯加奈とDQN彼氏の姿があった。
「ねえ青葉君今日何の日だかわかっているよね? 」
俺はその言葉を聞いて今日が俺の命日だったことをすっかり忘れていた。俺は再び額に汗が滲みだし緊張のせいで手が震えてしまった。俺はとっさの判断で言い訳を考え
「ごめん今日は人を待たせていてすぐに帰らないといけないんだだから明日じゃダメかな? 」
「はあ? てめえ何言ってるんだコラ。いいから来いよ」
俺はDQN彼氏に首根っこを捕まれ怯えた猫の様に膠着し強引に引っ張られる形で連れていかれた。そして部活の練習準備で賑わうグラウンドを横切りいつもの体育館の裏手に連れていかれるとそこには、DQN仲間が別のひ弱そうな男子学生を脅してお金を巻き上げている姿が目に映った。
「ちょっと待ってろ」
DQN彼氏がその男子学生に近づいて
「てめえ、俺の彼女に手紙送るなんていい度胸だな。」
「ごめんなさい。僕彼女が付き合っているなんて知らなかったから」
「慰謝料だ、てめえ今いくらあるんだ? 」
「1万5千円あります……」
「よしじゃあ今回は、1万5千で手をうってやる」
男子学生は恐怖のあまり震える手を抑えながら自分の財布から有り金を出してDQN達に手渡した。DQN達は、お金を受け取ると
「毎度ありがとうございました」
と威圧的な態度で男子学生の頭を撫でた。男子学生はそのまま勢いよく校門の方へ走って逃げて行った。
俺はそのやり取りを見て更に緊張が身体全体に走りいつもの様に震える手を抑え爪を噛みながら貧乏揺するり始めた。すると加奈が彼氏に近づいて先ほど巻き上げたお金を握りしめながら悪意に満ちた笑顔で話し出した。
「本当やんなっちゃうわ。ああいう気持ち悪い陰キャからモテるんだから。でもああいう奴らをカモにすればチクったりしないし友達もいないから外部にバレることがないから安心だわ」
「全くだ、ああいう奴らを見ているとムカついてくるぜ。」
「私可愛いからオシャレするためにお金必要なんだよね。でもウチの親、キャリア官僚で結構厳しいからお金貰えないしバイトも嫌だから楽してお金貰えるほうがいいしね」
下品な内容の会話を楽しく話しているのを俺は、全身汗まみれの身体で聞いていたすると奴らが俺の方へ近づいてきた
「さて待たせたな。それじゃ約束の慰謝料20万払ってもらうぜ」
「20万用意してないんだ」
「ああ?なんだとコラ」
DQN達の顔が見る見るうちに強張り俺の胸ぐらを勢いよく掴んだ。すると俺はいつもの癖が出てしまい
「ですからあなた様に20万支払うのは金をドブに捨てる行為だと思いまして更に、あなた様みたいなクズ人間にお支払いしてはクズの人生を歩んできたあなた様がさらにクズになってしまうと思い親切心でお支払することをやめました次第ですです」
「ああコラ、何度も俺たちをクズ呼ばわりしやがって」
「俺が言っているクズというのは馬鹿にしているクズではなく尊敬しているクズという意味ですです」
「きゃはは、こいつマジウケるんですけど」
「てめえクズっていう言葉に尊敬の意味はねえんだよ」
「ねえタクちゃんこいつもう金払う気なさそうだからやっちゃっていいわよ。また新しいカモ見つければいいし」
加奈が近くのベンチに座り女王様のような態度で俺を殴る様に指示を出すと彼氏は、右腕の拳を俺の頭上に振り上げ今にも拳が振りかざされようとしていた。俺は覚悟を決め目を瞑りながら叫んだ
「美音助けてくれ! 」
すると次の瞬間、
「やっと見つけたわ」
いいタイミングで美音が現れた。DQN達は、一斉に美音に視線を向けた。
「なんだこいつは? 」
「青葉未来ここにいたのね。早く帰るわよ」
美音が近づき俺の腕を引っ張って連れて行こうとしたが
「ちょっと待てよ。こいつにはこれから話があるんだ」
「うるさいわね、私はすごいお腹が減ってイライラしてるのよ」
「美音助かった。このクズたちに金を巻き上げられそうになって殺される寸前だったんだ」
「どういうこと? 」
俺は美音に事のいきさつを説明した。するとその様子をベンチに座りながら綺麗な黒髪を優しく撫でながら不機嫌そうな顔で美音を凝視する加奈が
「ねえタクちゃん、私あの女なんか嫌い。だからまずあいつを先にやっつけちゃってくれないかな? 」
するとDQN達は、不気味な笑みを浮かべて美音を取り囲んだ
「へへへ悪いがお前には少しお仕置きさせてもらうぜ」
「あんたにお仕置きされる筋合いはないわ」
そんなやり取りを見ていた加奈がしびれを切らせた口調で
「タクちゃん。やっぱりそいつ超生意気だからお仕置きしちゃって」
加奈がベンチで足を組みながら美音を見下すような視線を送ると美音も、加奈の傲慢な態度に腹を立てた。
「あんたってよく見ると性格だけじゃなく顔もブスね。自分に自信があるみたいだけど私から言わせればブスの分類よ。ナルシスト過ぎて気持ち悪いわ、性格が悪いと顔も歪んで見えるって本当ね」
美音は、皮肉を込めて加奈を罵倒した。それを聞いた加奈は自分の自信ある容姿を馬鹿にされ見る見るうちに表情が強張った。
「はあ? てめえ今なんて言ったんだ? 」
「あら? 聞こえなかったかしら? じゃあ何度でも聞こえるように大きい声で言ってあげるわ。ブスブスブスブス ヴゥス! 」
加奈は、美音のあからさまな挑発と自分が生まれて初めて容姿を馬鹿にされた事に激高した。
「タクちゃん、こいつマジぶっ殺して。マジで気に入らないわ。生かして帰さないで」
すると彼氏が美音の顎をクイッと上に引っ張りながら
「かわいい顔して生意気だな。今謝れば俺が可愛がってやってもいいんだぜ」
「残念だけどあなたみたいなクズ、タイプじゃないし、それに馬鹿が移るから私に触らないでくれる? 」
DQN達は、美音の挑発に怒り彼氏の右腕が美音に拳を振り降ろした
「この野郎可愛いからっていい気になりやがって。お仕置きだ」
すると美音が勢いよく振りかざした拳を左手で受け止め彼氏の拳を力いっぱい握りしめるるとボキボキと鈍い音が身体を伝って聞こえた
「いてててて離してくれ」
「私がこの世で一番嫌いなのを教えてあげるわ。それは弱いものを虐めるクズ野郎が一番許せないんだよ」
美音は、彼氏を怒りの目つきで睨みつけた。すると
「てめえ、いい加減にしろ」
彼氏が左手で美音の顔面に拳を振り下ろすと右手で彼氏の拳を受け止め更に力を入れて掴んだ拳を握りつぶした。
ボキボキボキ
「いててて、畜生なんて力だ。お前ら加勢しろ」
「言っておくけど私の力はこの馬鹿未来のおかげで強くなったのよ。私のチャンネル登録者数とGOODボタンの多さが私の戦闘力の数値として反映されるのよ。おかげさまで登録者数とGOODボタンの数値はトップ10に入るほどの人気チャンネルだったのよ。その意味馬鹿なあなたでも少しは、解るわよね? 」
美音の凄まじい気迫に負けてしまい周りの仲間たちは、蛇に睨まれた蛙の様になってしまい怯えて立ち尽くしていた。
「確かに未来は、変態で気持ち悪いし見た目も最悪だし、KYで男としても魅力はない未来のない奴だけど。そんなやつを虐めて金を巻き上げているお前達の方が私はもっと嫌いなんだよ」
怒りを露わにしてDQN達に立ち向かう美音に感銘を受けたが、この時俺の心は美音にキツイ本心を言われたことで心に1000本の針を刺された痛みを感じていた。
「美音………… 結構それ言われると痛いわ」
しかし痛がっているのか俺だけじゃなくDQN彼氏もだ。
「いててて、この」
彼氏は、美音に勢いよく頭突きをするが美音の頑丈な頭に負け額から流血してしまう。
「俺が悪かった。だから助けてくれ」
「そうやっていろんな奴から金を巻き上げていたんでしょ? さあ私刑執行よ」
バチバチバチ
美音の身体から放った電撃が掴んだ腕を伝ってDQN彼氏の身体に伝わり
「ぎゃあーーーー」
彼氏は、感電してその場で失神してしまった。
「タクちゃん! 」
加奈が心配そうな表情で彼氏に駆け寄った。DQN達は、恐れてその場から逃げ出してしまった。すると美音が加奈に近づき
「あなた、今まで奪ったお金返しなさい」
加奈は、先ほど奪った1万5千円だけを渡たした。すると
「あなたこれだけじゃないわよね? 他のお金どうしたのよ? 」
「元締めのタクちゃんのお兄さんが持ってるわ」
「じゃあ今すぐ返しなさい」
「バカねタクちゃんのお兄さんは、プロボクサーで新人王に輝た人よ。あなたなんてサンドバックにされるのがオチよ」
「そんなの関係ないわ。弱い者いじめする奴はどんな奴でも私がお仕置きをするだけよ」
美音は、怒り叫ぶ加奈を無視しつつ俺の腕を引っ張りながら正門の方へ向かって歩いた。俺はプロボクサーということを聞いてしまい更に爪を噛んで怯えていた。
「ちょっと爪噛むのやめなさいタダでさえ気持ち悪いんだから余計気持ちが悪くなるわ」
俺は強い叱責を受けながらも無事に学校を後にすることが出来た。
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