第4話 決戦前夜

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第4話 決戦前夜

しばらく歩き自宅へ向かう途中で美音の様子に変化が生じた。 「やばいお腹空いて力が入らない。さっきの戦いで結構エネルギー消耗したわ」 美音は、住宅街の壁にもたれるようにへたり込んでしまった。俺は心配して美音に近づいた 「大丈夫か? どうすればいいんだ? 」 「甘いもの…… 糖分が欲しいわ」 俺は、ふらつく美音に肩を貸しながら近くのファミレスへ向かった。ファミレスに入ると大学生風のバイトの女性が俺たちを対応してくれたが。俺が美音に肩を貸しながら入店した様子を見て少し顔をひきつらせながら奥のボックス席へと案内してくれた。 まだ夕飯には少し早い時間だったので店内は、一人でドリンクバーを片手にパソコンで仕事をする男性と女子高生のグループしかいなかった。俺は、美音を席に座らせると向かい側に座わりメニュー表をテーブルに広げた。 「とりあえず、今日は助けてもらったから奢るよ」 俺は助けてもらったお礼がしたかったので美音に好きなものを注文するように話した。 すると10分後…… テーブルに置ききれないほどのパフェやアイス、ケーキなどが並び目を輝かせながら勢い良くスイーツを頬張る 「う~ん生き返る」 「おい、少しは遠慮しろよ。お前それ以上食ったらデブになるぞ」 俺がその事を言った瞬間に俺の顔面に強烈なストレートパンチを食らわせてきた。俺は生まれて初めて顔面強打により星を見た瞬間だった。 「あんた本当に殴るわよ」 「いや………… 殴っていますから」 「あんた、人に対する気持ちがわからないからモテないし友達もできないのよ」 俺がストレートパンチを食らって顔面を抑えながらうずくまっているとそんなこともお構いなしな美音が 「すみませんストロベリーパフェ10個追加してください」 尋常な様子に周りにいたお客さんの注目を浴びることになるが美音は特に気にせずその後もスイーツを堪能した。 俺は、そんな幸せそうな様子をしり目に財布を取り出し何度も手持ちのお札を爪を噛みながら数えていた。 「せっかく配信で稼いだお金が…… 」 俺は、憂鬱な気分で何枚にも連なるレシートをレジに持っていくと対応してくれた店員もひきつった顔で俺をチラチラ見ながらレジ打ちをした。俺は何となく気まずい雰囲気の中待っていると。 「お会計が13200円です」 人生で初めてデザートだけで1万円以上の会計をした。美音は満足そうな笑みを浮かべながら一緒に帰宅した。因みに俺の両親は外務省の職員の為、只今海外に転勤中だ。そのお陰で都心にしては少し広めの4LDKの自宅に一人で住んでいる。 だから家の中に美音を連れて行っても特に気にすることなく生活が出来る。だが仮に両親がいた場合俺が女の子を家に連れてきたとなれば大騒ぎになること間違いなしだ。俺はいつもの様にリビングの明かりをつけふかふかのソファーにもたれかかりながらリモコンを付けてテレビを見ていると 「ねえ、お腹空いたんだけど」 「お前さっきいやって言うほど食べただろ? 」 俺が台所の方に焦点を当てると美音が勝手に冷蔵庫の扉を開けて物色をしていた。 「プリンがあった」 俺が楽しみに取っておいたプリンを満面の笑みで頬張った。俺は先ほどのストレートパンチの痛みも残っていたので小声で美音に聞こえないようにぐちぐちと文句を言った。プリンを食べて満足そうにソファーで寛ぐ美音に対して聞いておきたいことがあった。 「そう言えばお前の性格なんでそんな凶暴なん」 俺がいい終わろうとすると顔面の中心に激しい痛みと衝撃を感じた。 「凶暴じゃないでしょ? 」 俺は、痛みにもがき苦しみカーペットが敷かれた床で七転八倒した。少しして痛みが和らいだので改めて聞いた 「だから何でお前の性格は、きょうぼじゃなくて俺が設定した性格と違うんだ? 配信中は清楚な妹キャラだったろ? 」 「あ~あれね。あれは演技、だってああでもしないと気持ち悪いファンに支持されないでしょ? だからGOODボタン貰って強くなるための演技よ」 俺はこの話を聞き昨日まで世界で一番恐ろしい女は、佐伯加奈だと思っていたが俺の中の恐ろしい女ランキング1位が塗り替えられた瞬間だった。その後は、美音がお腹空いたなどと騒ぎだし勝手にピザの大量注文をされる始末だ。おかげで俺は、気力、体力、そして金を一番使わされた1日となった。 しかし翌日俺はとんでもない出来事に直面してしまう。いつもの様に元気に鳴く雀の声とカーテンの隙間から射す日差しで目を覚ました。俺は重い瞼を擦りながら机の上にある目覚まし時計を確認すると時計の針が午前八時をさしていた。ハッと我に返った俺は 「ヤバい、目覚ましをセットするの忘れていた」 俺は急いで制服に着替え教材を慌ててカバンに詰め込むと急いで美音が就寝している部屋に行き気持ちよく寝ている美音を起こし学校へ行くことを伝え寝癖も直さず俺は、制服のネクタイを締めながら急いで学校へと向かった。 俺は、息を切らし顔中汗だらけになりながらも必死に学校へ向けて走った。この時俺は頭の中である不安を抱いていたそれは何時も正門で竹刀を振り回している体育教師の事だ。 しかし俺が校門に到着すると案の定不安は的中していた。前に到着した男子生徒が竹刀を持ったマウンテンゴリラに追い回されていた。俺は、カバンで顔を隠しながらおぼつかない脚でゆっくりと奴の後ろをまるで忍者の様に通り過ぎようとしたが…… 「おい、貴様今何時だと思っているんだ? 」 大きく硬い手が俺の左肩を叩きギュッと力を入れてきたのを感じ恐る恐る振り向くと顔を真っ赤に染め怒りに満ちたマウンテンゴリラと目が合った。俺はいつもの癖で貧乏ゆすりと爪を噛みはじめ奴にやられる覚悟を決めた。すると次の瞬間、俺の顔をじっと睨みつけていたマウンテンゴリラが一気に青ざめて正門の端で縮こまって怯えてしまった。 「ごめんなさい、もう回し蹴りは結構です」 俺は、キョトンとした顔で怯えながらブツブツと話す内容を聞き取るとどうやら奴は、美音にやられたことがトラウマになっており俺が美音の連れだと言うことを知っていたため俺の顔を見て怯えてしまったようだ。 俺は、今の隙に急いで校門に入り急いで自分の教室へ皆に気づかれずに侵入することに成功した。この時初めて自分の陰キャとしての価値に感謝した。その後は何事もなく今日の授業が終わり終了のチャイムが鳴り俺はいつもの様に身支度を済ませ足早に教室を後にした。 この日俺は、加奈から何か復讐をされるかと思っていたが警戒していた割には何事もなく平和に過ごすことが出来た。下校する生徒達で賑わう中俺は自分の下駄箱の扉を開けると靴の上に花柄のかわいらしい封筒が置いてあった。 「もしかして俺へのラブレターかな? 」 俺は、初めてもらったラブレターに興奮し人目を気にせずビリビリと勢いよく筒を破り中に入っている手紙に目を通すと。 「キモい未来君へ。明日の夕方5時に近くの倉庫にあのバカでアホ面のブゥスを連れてきなさい。昨日話したタクちゃんのお兄さんと対決に勝ったら今まで奪ったお金を返すわ。可愛い加奈より」 俺は加奈からの果たし状だと知り萎えいてしまった。俺は加奈からの手紙を右手で握り締めながら急いで帰宅した。鍵を開けて自宅に入るとカーテンの隙間から茜色に染まった夕日が射しておりテレビはおろか電気すらついていなかった。 「もしかして美音に何かあったのか? 」 俺は、不安を抱きながら恐る恐る美音が寝ている部屋の扉をゆっくりと開け中に入るとバナナの抱き枕をギュッと抱きながら気持ちよさそうに寝ていた。 俺は、まだ寝ているのかと心の中でツッコミを入れるがとりあえず無事大人しく家で寝ていたことがわかり安堵した。しかしこの時の俺はまたいつもの様に 「普段は凶暴なのにこうして寝ている姿を見ているとやっぱり可愛いな」 俺は美音の可愛い寝顔を見たせいで急に心臓の鼓動が早くなり全身にソワソワ感が走ると俺の脳内ではキスへの欲求で埋め尽くされ俺は、前回同様少しずつ美音に顔を近づけた。 「これもチェリーボーイの性、今の時間まで寝ていたんだから起きやしないだろう」 俺は勝手な解釈で美音の唇までわずか数センチの所で美音が目を覚ましてしまい俺は今回電撃ではなく勢いよく後頭部に回し蹴りを食らうこととなった。その後痛みも落ち着き俺がリビングで寛いでいるとお風呂から上がって来た美音がいつもの様に 「未来の変態野郎、今度やったらこんなもんじゃすまないからね」 この時の美音は天使のような寝顔の面影はなく俺は、あのマウンテンゴリラが怯えていた姿が脳裏によぎり奴に同情した。俺はこの時あることを思い出した。 「今日俺の下駄箱に加奈からの手紙が入っていた」 俺はクシャクシャになった手紙を美音に渡した。すると加奈の挑発的な内容に怒りだし勢いよく手紙を破り捨てた。 「あのブゥス女めこの借りは100倍にして返してやるんだから」 俺は美音の身体から発せられる怒りの電磁波に圧倒され蛇に睨まれた蛙の様に怯えていた。 「とりあえず明日あの例のボクサーとの直接対決だがお前大丈夫か? 」 すると美音は分かりきった顔をしながら 「馬鹿ねあなた原作者でしょ? 私今までどれだけ手強いDQNを倒してきたか分かるでしょ? 」 俺は美音の自信たっぷりな顔を見て胸をなでおろした。 「確かにお前は強い。なんたって俺がデザインしたんだからな」 俺は高らかに答える 「じゃあ戦前にまた甘いもの沢山食べに行こう」 「お前毎日甘い元沢山食べると…… 」 その時俺は美音の顔が鬼の形相に変わるのが分かり始めて空気を読むことが出来た。 「よしじゃあ食べに行くぞ。未来財布忘れないで早く来なさい」 とりあえず俺たちは、英気を養うために近くのファミレスへ向かうこととなった。    
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