一章 探偵部、おかしな先輩

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 翌朝、家から出るやいなや、涼ちゃんは言った。 「占星術殺人事件、読んだぞ」  あくびをしようと開けていた口を、ぼくは驚いて閉じた。眠気なんて、吹き飛んでしまった。 「本当に!」 「嘘なんてつくかよ。おもしろくて、一晩で読み切ってしまったよ」 「ああ、良かった……。気に入ってもらえて」ぼくは胸に手を当て、ほっと胸を撫で下ろした。眠る前も、気に入ってもらえなかったらどうしようとドキドキしていた。 「キョウがハマるわけがわかったわ。犯人は誰なんだって気になって気になって」と涼ちゃんは言った。「眠らなきゃって思ったけど、ついつい徹夜してしまったよ」  ぼくは嬉しくなって言った。「お肌には良くないのにね!」 「一言多いぞ! でもまあ、あんな真相だったとは、驚いたよ」  ぼくはこくこくと頷いた。「そうでしょう、そうでしょう」 「なに自分のことのように喜んでんだよ」 「そりゃ自分のことのように嬉しいよ! ぼくが面白いと思って紹介した小説を、面白いって言ってくれるなんて」 「そんなもんなんかあ。なら、シャーロック・ホームズも読んでみるよ」 「うん、あれも面白いから。百年間も名作として残っているだけのことはあるから」 「すごく上からだな」 「えっ、そうかな。べつにそんなつもりじゃ……」  そう聞こえていたとは……。いけない……、今の会話をどこかにいる『シャーロキアン』に聞かれていたとすれば、ぼくは粛清されていたに違いない。くわばら、くわばら……。
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