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四章 真相
秋里さんの自殺について、解ったことがあると先輩は言った。
いったいなにが解ったというのだろう? 自殺であるということは、間違いないはずだけど。その他に考えられるとすれば──
頭を捻ってみたけど、ぼくには全然思いつかなかった。出来はどうあれトリックは思いついても、解く才能はないようだ。
先輩が待ち合わせ場所に指定したのは、近くのファミリーレストランだった。
数分間、自転車を漕ぐと目的地についた。ぼくと涼ちゃんは駐輪場で自転車を止めると、ファミレスに入った。
店内からはハンバーグのいい匂いが漂い、客は少なく、かすかな雑音が流れているヒーリングミュージックとマッチしていた。
先輩は窓際の席にいた。ぼくたちを見つけると、右手を挙げ振った。ぼくはぺこりと会釈した。
店員さんがやってきて二名様ですかと訊かれたが、先輩の席を指差し、連れが先に来ているのでと言った。
なおも手を振り続ける先輩に恥ずかしく思いながらも、ぼくたちは歩き出し、席についた。
「すまんな、呼び出して」
「いえ、そんなことないです」
「ドリンクバーをすでに頼んであるから、好きなの入れておいで」と先輩は言った。「奢ったるさかい」
「ありがとうございます」
「おう」先輩は、先輩ぶった顔をしてメロンーソーダを飲んだ。
涼ちゃんは言った。「じゃあパフェ頼んでもいいですか」
先輩は口に含んだものを吐き出しかけた。そこまで驚くことなんだろうか?
「ま、まあええけどやね……」
「嘘ですよ」と涼ちゃんは言った。「冗談です」
「なんやそれ!」先輩はずっこけそうになっていた。けど目に見えて安堵していた。
ぼくたちはドリンクを入れにいった。ぼくはブラックコーヒーを入れ、涼ちゃんはオレンジジュースを選択した。
席に戻ってくると、
「先輩は、今までどこかに行ってたんです?」とぼくは訊いた。「バーのあと、用事があるからと電車にも乗りませんでしたし」
「わけがあってん。それを踏まえて今から話すわ」
ぼくは妙に緊張してしまい、ゴクリと唾を飲んだ。そして喉を潤そうとコーヒーに手をつけた。
涼ちゃんも落ち着きがないようだった。期待と恐ろしさ半分といったところだろうか。
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