プロローグ

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入学してちょうど1週間が経った。 今日は、部活動紹介がある日だ。 体育館にて 集会 生徒指導の先生や校長先生からのお話が終わり、やっとのことで部活動紹介が行われることになった。 「さて、いよいよ新入生のみなさんがお待ちかねの部活動紹介の時間がやってきました!」 放送部の明るい司会が入る。 「えー、トップバッターはバスケ部男子。ということで、1年生のみなさんは体育館の後ろに向いてください。2、3年生の生徒はギャラリーに登ってください。 これから、バスケ部男子のみなさんが練習の様子を見せてくれるそうです。」 しばらくして、練習着を着た背の高い男の人達が体育館に入って来た。 2階のギャラリーからは黄色い声があがる。 「お姉ちゃんに聞いたんだけど、うちの高校のバスケ部、イケメンが多いらしいよ」 と、杏がにやけながら小声で伝えてきた。 確かに、背も高くてみんなテレビに出てくるアイドルみたいにカッコいい。 シュートが決まる度、女子のキャーという悲鳴のような歓声が上がる。 「えー、お次は、バスケ部女子のみなさんによるキュートなダンスです!」 バスケ部男子と入れ替わりでヒラヒラのスカートを履いた活発そうな人達が入って来た。 「新入生のみなさん、こんにちは! 私達は女子バスケットボール部です。 2年生8名、3年生10名、計18名で活動しています…」 そんな感じで今流行りの曲に合わせてダンスが始まった。 その後もテニス部、野球部、サッカー部などの運動部の紹介があり休憩を挟んで、美術部、新聞部、写真部などの文化部の紹介があった。 そして… 「最後は、我が校の華である、吹奏楽部のみなさんです!どうぞ!」 司会を合図に真っ赤な衣装に身を包んだ吹奏楽部の人達が入って来た。 体育館の照明に輝く楽器が眩しい。 「みなさーん、こんにちはー! 私達は南高吹奏楽部です! 2年生18名、3年生20名、計38名で活動しています。 今日は、マーチングをお見せしようと思います。 曲は、みなさんも聞いたことのあるあの曲。 『ルパン3世のテーマ』です!どうぞ!」 わっと拍手が起こった後、曲がサビから始まる。 曲に合わせて演奏者が動く。 キレッキレと全体の並びが変わっていく。 かなり激しく動いているが、その間も曲は止まらない。 誰1人として迷うことなく、まるで点と点を結ぶかのように動いていく。 すごい。単純にすごいと思った。 それに、最後にポーズを決めた時の部員の笑顔が心に刺さった。 「杏ちゃん、私、吹奏楽部に入る。」 集会が終わった後、何気なく口から滑り出た。 「ええ!花、あんた正気?」 「うん」 「いや、そりゃ、応援するけどさ、あんた楽譜とか読めんの?」 「読めない」 「それに、お姉ちゃん言ってたよ。 うちの吹奏楽部はブラックだって。」 「ブラック?」 「そう、休みないんだって」 「ふーん、そっか。」 「ふーんってそれでも良いの?ねぇ、花、聞いて…」 私は杏ちゃんの声なんて耳に入ってこなかった。 ブラックだろうとなんだろうとあんな風に笑える部活に入れるなら、それで良かった。
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