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うさぎちゃん
俺は、高濱健吾。
高校1年生。
中学まではテニスをやっていたが、高校から吹奏楽部に入り、フルートを始めた。
男でフルートをやるというのは結構珍しいらしく、いろんな人から驚かれたりからかわれたりした。
でも、あの日、そんなことどうでもよくなった。
ミュージックフェスティバルの合同合奏で俺の右隣にいたのは緩くウェーブがかかった髪を耳の下で2つに結んだ、背の低い小柄な女の子だった。
楽譜に名前が書いてあった。
宇佐美 花。
全体的に薄いピンクが似合う結構可愛い子で、その名前もあって俺はその子のことを「うさぎちゃん」
と、そう呼ぶことにした。
リハーサルでうさぎちゃんは俺が吹けないことに気づいたのだろうか。
「あの、フルートいつから始めたんですか?」
と、恐る恐る上目遣いで尋ねてきた。
彼女のために言っておくが、上目遣いは意図的ではなく、あくまでその身長からそうなってしまったという自然現象である。
そんなことはどうでもいいか。
話を聞いてみると、どうやら彼女も俺と同じ高校1年生で今年からフルートを始めたらしい。
話したのはそれだけで、その後は何事も無かったかのように、彼女は楽譜を見つめだした。
夜、家に帰ってからふと思い出す。
うさぎちゃん、可愛かったな。
でも、市外だし、もう会えることは無いかもしれないな…
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