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私はいつから
少女を捨ててしまったのだろう
「さなえちゃんは大人だねえ」
そう言われながら育って
いつしか何もできない自分が
体と体面だけ大人になっていく
前髪を伸ばし始めたのは
その時だったのかもしれない
夫の腕の中にいるとき
私はほんのこどもだ
胸に顔をうずめて泣きじゃくる
ちゃーちゃんはその時外に初めて現れる
私ね。昔、自分の名前がうまく言えなくて。さなちゃんって言えなくて、ちゃーちゃんって言っていたの。
おさげにぱつんと切りそろえられた前髪のちゃーちゃんは
今では眉墨とほほ紅の値段を気にする主婦になっていた
ちゃーちゃんは
今だって私の中にいて
体育座りをしている
時々むずかる
おなかがすいたよう。あるくのつかれちゃったよう。
泣きたいときは泣き
怒りたいときには怒る彼女を
とてもうらやましく、思う
大人になったら仮面を被る生き方に
どうしてなってしまったのだろう
そんなちゃーちゃんと対話して
朝が来るのを待っている
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