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麻里奈が休職している間に、アールデザイン事務所に発注したノベルティーを使ったキャンペーンが始まり、実店舗から好評を博しているとの報告を受け、販売促進部は勢いづいていた。
さあ、次の仕事、仕事!
よーし、頑張るぞ〜。
私は、公私ともに充実した毎日を送っている。
麻里奈も少しずつ回復しているようだった。
だけど、本当に少しずつなんだよね…、擦り傷や切り傷なら時間が経てば治るんだけど、麻里奈の心の傷は想像以上に深いのだろう。
麻里奈のことを考えると、胸が締め付けられる思いがする、そのことに変わりはなかった。
「冴木さん!暇?」
会社のエントランスで、帰社したばかりの高木さんに声を掛けられた。
「ああ、高木さん!なんだか久しぶりな気がしますね? 元気でした?」
「ははっ、元気だけが取り柄だって!俺は。」
いやいや、そんなこと無いでしょう?
営業部、期待の星じゃないですか〜!
「またまた、ご謙遜を。」
「いや、ところでさ。
井上さん、あんなことがあって休職しちゃったけど、元気にしてる?」
高木さん!やはり、麻里奈が気になりますか?
「元気ですよ、今は落ち着いてます。毎日、お菓子作りとか花嫁修行みたいなことしてますけどね。何か? ご用ですか?」
「うん、気分転換に…、誘ってみようかなと思ってるんだけど。」
あ、だけど…、麻里奈には好きな人いるんだけどな…。
「高木さん…、それは…どういう意味の?」
「純粋に、職場の同僚として?
いや、違うな、彼女のことが気になってる。」
「あの〜、麻里奈には好きな人がいますよ?」
「んっ?関係ないよ、そんなの。」
「えぇっ、そうなんですか?」
「好きな人に好きな人がいたら、簡単に諦めるの?俺はそうじゃないから。」
さすが、営業ナンバーワンの男だ。
だけど、ある意味タチが悪いんじゃ…。
「ふふっ、冴木さんの時は坂崎さんがいて、俺が入り込む余地が無かったから、泣く泣く諦めたんだよ? 覚えてる?俺の告白。」
「また〜、意外とあっさりしてた癖に〜!」
絶対ウソだ〜、
高木さんは、ニヤニヤ笑っている。
「良かったら、冴木さんも一緒にどう?
俺の大学時代のOBが集まって、ラグビーやってるんだけど、試合を見に来ないかな?と思って。」
「はぁ、ラグビーですか?
ルールとか、全く知りませんけど?」
巷でラグビーが大ブームにも関わらず、全く興味が無かったんだよね。
気分転換か?麻里奈には良いかもしれないな。行ってみる?
「じゃあ、高木さん!
とりあえず、麻里奈に聞いてみますね?」
「うん、是非!じゃあ、また連絡して!」
「はい、ありがとうございます。」
去って行く高木さんの後ろ姿を見送りながら、
清々しい思いが胸に広がった。
麻里奈、
いい男、こんなに近くにいたじゃないの。
そんなことを考えながら、麻里奈にメッセージを送信しておいた。
さて、どうなることやら…。
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