6517人が本棚に入れています
本棚を移動
/173ページ
私の目の前に現れたのは、柔かに微笑む美しい女性、義姉の葉月さんだ。神様、ありがとう!
「お、お姉さんっ、嬉しい!ちょうど良いところに来てくれました〜。」
安心した私はお腹を抱え込んだまま、その場にへなへなと座り込んだ。
「どうしたの? 優香ちゃん!
大丈夫? もしかして陣痛が来ちゃったとか?」
コクコクと頷く私の背中を摩りながら、葉月さんは私を励ましてくれる。
「来てみて良かった!凛太郎から偶には様子を見に行ってくれって、言われてたのよ。
大丈夫よ、初産ですもの。そんなに直ぐに産まれたりしないからね。
ふふっ、そう簡単に産まれてくれないものなのよね〜。さっ、準備しようか?」
実は葉月さん、私達の結婚直後に妊娠が発覚し、そして無事に出産を済ませ、今では一児のママなんだよね。
以前から、子どもを切望していた葉月さんと、もうすぐ50歳になるというご主人の間に生まれた長女の愛花ちゃんは、それはそれは愛らしくて、両親の溺愛レベルが半端ない。
あまりの過保護ぶりに、周囲は密かに愛花ちゃんの将来を心配していたりする…。
凛太郎が愛花ちゃんに、『愛花、俺の息子の遊び相手になってくれよなぁ〜。』なんて言った日には、『あんたの息子なんて、危なくて相手させられないわよっ!女の子にしてよね、絶対女の子よ!』と…。
その目が、かなり本気だったのを記憶しているんだけど…。
ヘヘっ、お姉さん、その子は私の子どもでもあるんですよ……。
だけど今、出産の先輩である葉月さんが側にいてくれることは、私にとって非常に心強い存在であることは間違いない。
それから、とりあえず診察を受ける為に、病院に電話をして状況を説明した。
『入院準備の荷物を持参してくださいね。お待ちしていますので、慌てずに気をつけてお越し下さい。』そう言われて、改めて出産が近いことを自覚した。
最初のコメントを投稿しよう!