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「子宮口全開です。さぁ頑張りましょう。」
青い手術着を来た担当医が、静かに話しかけた。
「はい。」
私は思った以上に冷静な声で、答えていた。
そして、凛太郎の手をギュッと握ると、彼は更に強い力で握り返してくれた。
その後は余裕なんか全く無くて…。
勉強してきたことが、出来たかどうかも分からない。
ただ夢中で、医師や看護師の声を頼りに、言われたことを必死にしようとしていた。
分娩台につかまり下半身に意識を集中させながら、ふぅ〜っと長〜く息を吐きながらイキむ。すると、多量の汗が吹き出した。
凛太郎が私の汗を拭いながら、
「優香、頑張れ!俺がついてる!」
「頑張って優香、イキんで!」
凛太郎も私と一緒に、長い呼吸を繰り返した。
そのうちに、私もコツが掴めてきた。赤ちゃんの動きと呼吸を合わせてイキむと、赤ちゃんがグンと出口に近づいてくるのを感じた。
赤ちゃんも頑張ってるんだ!私も、もっと頑張らないと!
もう赤ちゃんは、そこまで来ている。
後ひと息だ…、コレが最後のいきみだ!そう思って、ふう〜〜〜っと、長〜くイキんだ。
ああぁぁ〜、ズルリッ…。
なんとも言えない爽快感が、私の体を駆け巡った。
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