恋に躊躇する

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昨日の凛太郎の件は、麻里奈にまだ話していない。 そろそろ昼休みだけど…、 麻里奈は、まだ仕事に追われているようで。 「優香、社食だよね?先に行ってて〜。 まだかかりそうなんだよ、これ!急ぎだから、やっちゃうわ。」 「了解!先に行ってる。早くおいでよね!」 忙しそうな麻里奈を置いて、社食に向かった私だったが、エレベーター前で今井健斗に遭遇してしまった。 げっ、最悪。 今井も気まずそうだけど、ここは大人の対応してやるからなっ! 「お疲れさまです。」 「あ、あぁ、お疲れ…」 ふっ、動揺してるな。 不思議なもので相手の動揺を感じとると、何故かこちらは冷静になり、優位に立てたような気がした。 「こ、今度の、企画…良かったな。」 「ありがとう、これから忙しくなりそうなの。 あっ、そうだ! 今井さん、ご婚約おめでとうございます。 まだ、言ってなかったね。 いろいろあったけど全部もう過去だから、お互い忘れよう、お幸せにね。」 そう言って、極上の笑みを投げかけた。 腹の中では全くそんなこと思ってもないけど。 女を舐めるんじゃないっての! 心の中で、あっかんべ〜だ! ふふふっ、腹黒優香さま降臨だ〜。 んっ? 「あ、あのな、そのことなんだけど!」 今井が何か言いかけたその時、エレベーターが到着を知らせるポーンという音が鳴った。 「あっ、来たね。乗りましょう。」 それ以後は、何も話すことなどない。 「やあ、冴木さん!」 「あっ、 市川課長!昨日はお世話になりました。」 市川課長を見て、自然と笑みが溢れた。 ハイスペック上司の市川課長に声をかけていただいて、もう感激ですよ私は。 しかも、今井の前とは絶妙なタイミング! もう神が味方してくれているとしか思えない。 まぁ、振られた女の見栄と言えばそれまでか? 少し沈む…。 一度は好きになった人なのにな…。 最近、情緒不安定かも…。
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