恋に躊躇する

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「冴木さんも、社食?」 と、市川課長に聞かれた。 「はい、そうですけど?」 「俺もなんだ。 たぶん場所取ってくれてるはずだから、一緒にどう?」 チラリと今井がこっちを見たが、まさか今井と一緒というのは有り得ない。 「はい、いいんですか? じゃあ、お言葉に甘えて、ご一緒させていただきます。 あっそうだ!もう一人、後から来るんですけど大丈夫ですか?」 「大丈夫だよ、行こう。」 市川課長に連れられて社食に行くと、高木さんが席を取ってくれていたようで、 「市川課長、こっちで~す! あっ!冴木さん、市川課長とご一緒ですか?」 「はい、そうなんですよ。お疲れさまです、高木さん。」 高木さんは嬉しそうな顔をして、「お疲れさま」と答えた。 「あの?営業の二人は来ないんですか?」と、高木さんが課長に聞くと、 「ああ、急ぎの用で出て行ったから、俺と高木だけだ。だから代わりに連れて来たんだよ、冴木さんを。 本当はエレベーターで、たまたま捕まえたんだけど。」 そう言って、ケタケタ笑う市川課長は年齢相応の普通の男性だった。 安心した。 実は、ここに着くまで緊張してたんだ。 「課長、知ってます? 俺と冴木さんは、既に友達なんですよ。」 嬉しそうに話す高木さんを、市川課長は一瞥した。 「なんだ?高木、俺を牽制してるのか? おまえ、小学生並みだな。」 「いえ、ちゃんと言っとかないとと思いまして、俺の好きなタイプは、っ」 「た、高木さん!もうっ、余計なこと言わないでくださいよっ。」 「ははっ、高木!望み薄そうだなっ。」 高木さんを揶揄う課長は、もはや子どもだ。 その時、社食入り口に麻里奈の姿が見えた。 「麻里奈!こっちこっち!」 私が手を振ると、こちらに気づいた麻里奈は、なんとも嬉しそうな顔をした。 そりゃそうだよな、高木さんだけじゃなくて 市川課長までいるんだから。 席に着く直前、 「でかしたぞ、優香!」 と、私の耳元で小さな声で囁いた。 麻里奈のターゲットは、市川課長なんだろうか? 積極的なんだよなぁ。 その行動力が羨ましい。
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