6515人が本棚に入れています
本棚を移動
/173ページ
それから、俺は留守中の仕事の進行具合をチェックし、藤川から報告を受けた。
近頃、デザインの発注が急増して、俺達は多忙を極めている。
この男、藤川拓也とは大学の同級生で長年の腐れ縁。
こいつは一見、エリート銀行員のような風貌をしているが、仕事以外に関して言えば驚くほど緩い男だ。
二人で一緒に飲みに行けば、俺の方が遊び人に見られがちだが、実際は藤川の方が間違いなく遊んでいるというのが事実だ。
だがしかし、こいつの天性の営業センスは眼を見張るものがあり、俺はこいつの営業力に一目置いている。
「藤川、今日はこれぐらいにしとくか?」
「あぁ、益々、忙しくなって来たなぁ。」
「おお、おまえのおかげでな〜」
藤川は嬉しそうに笑った。
「そういや、凛太郎!あの彼女、優香さんとはその後どうなんだよ?」
「どうもしねーよ…」
「は?グズグズしてんな!俺が行っちゃうぞ? タイプだよ、ああいうのも!地味そうに見えて…なかなか。
オフィスでの彼女も好きだなぁ〜。」
妙な妄想を繰り広げていそうな藤川の頭を、俺はペシっと叩いた。
「いでぇっ!何すんだよ〜!」
「アホなことばっか、言ってるからだ!ほれ、そろそろ帰れば?」
「なぁ凛太郎、飲みに行かねぇ?」
「また、7か?」
「そっ!凛太郎も行こうぜ!結構いい店なんだって!」
また、チャラい奴が集まってるんじゃないかと思って、俺は藤川の行きつけの店Bar7には行ったことがなかった。
まっ、そのうち覗いてみるか?
「おお、そのうちな?今日はやめとく。」
ひとりオフィスに残った俺は、いつの間にか優香のことを考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!