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イブイブ凛太郎
あいつ〜、藤川!
ほんと、お節介しやがって…。
マジでムカついたけど、優香の話を聞いたら、あいつなりに俺を応援してくれているのかもしれないとは思った。
だが…しかしだ、
俺は、優香を泣かす奴は許さねー!
「藤川、待たせたな。」
「凛太郎、どうした?」
「どうしたもこうしたも、ねぇよ!
おまえ、優香に余計なこと言っただろ?」
一瞬怯んだ藤川だったが、
「彼女、なんて言った?」
そう言って笑った藤川に、俺は軽く一発お見舞いしてやった。
「な、なんだよっ、いきなり!あぶね〜な!」
あいつが避けた所為で、幸か不幸かまともに当たらずに済んだ。
藤川、なかなかの瞬発力してやがるな…。
それでも、幾らかのダメージは与えたようで、
すぐに左の頬骨辺りが、腫れ上がりはじめた。
「優香には言わない約束、破りやがって!」
「あ? 言って振られるのが怖かったんだろ?
大切な女なんだったら、最初から話してやれよ! 彼女だけ知らないなんて可哀想だと思わないのか? ふんっ!で?ニューヨークへは連れて行くのか?」
「行かね〜よ!」
「は? 置いて行くのか?冷たい奴だな。
てっきり俺は、クリスマスにプロポーズして、ニューヨークへは二人で旅立つんだと思ってたよ!」
「俺が行かねーの!」
藤川が、俺の胸ぐらを掴んで言った。
「待てっ!凛太郎、まだそんなこと言ってるのか? ニューヨークは、おまえの夢じゃなかったのか?」
「おまえ、学生時代の夢が、今もそのままだと思ってんじゃねーよ。
ニューヨークなんて俺がその気になれば、いつでも行ってやるよ。」
「凛太郎…、いいのか?本当に。」
「ああ、いつかな、優香を連れて行く!
女のことばっかりで、ダセーとか思ってるんだろ?だけどな、優香は違うんだよ。
俺にとって特別な女なんだ。
まぁ、おまえには、まだ分かんないかもしれないけどな?
とにかく、今じゃねぇんだよ。
俺はまだ、日本でやることが山ほど有るんだよ。それにニューヨークに行けば、誰でも成功するわけじゃないしな。
日本に居たら、俺の才能が腐るわけでも無いだろ? いつかは行く、だけど今じゃ無い。
分かってくれるか?」
俺の本気が伝わったのか、藤川の表情が変わった。
「凛太郎、すまん!悪かった。」
藤川の神妙な顔を、久しぶりに見た。
やっと、分かってくれたか…。
「いや、気にすんな!
俺も悪かったよ、早く帰って、顔冷やせよ?
俺も帰るけど…ありがとう、藤川。
じゃあな…。」
「凛太郎!」
振り向いた瞬間、藤川の拳が飛んできた。
避けきれずに、こめかみを掠めた。
「痛ぇーっ、何しやがる!このヤロ〜!」
「お返しだ!取っといて。」
くそっ、痛ぇ!
俺は藤川を睨みつけたが、あいつは笑ってた。
そんなあいつを見ていたら、俺も可笑しくなって笑った。
「おお、じゃあ明日な。」
ふんっ、変なヤツ。
まっ、仕方ね〜!相棒だからな…。
痛ぇ、早く帰って冷やさないとヤバイ。
いよいよ明日は、クリスマスイブ…。
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