幸せになろう

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幸せになろう

神聖な教会の控え室、 華やかなウェディングドレスに身を包んだ、美しい花嫁が話しかける。 「凛太郎さんは、まだ?」 「うん、ギリギリかも。 本当は昨日だったのに、まだなの。間に合うといいんだけど…。」 「天候だけは、どうしようもない。 ニューヨークからだもん、しょうがないよ。」 ため息を吐く私に、麻里奈が微笑んだ。 「ほら、そんな顔しないで? 優香がいてくれれば、十分なんだから。 心配し過ぎたら、赤ちゃんに良くないよ?」 「凛太郎に会うのも久しぶりだから、早く会いたい…。」 「だよね。里帰り出産だもんね。」 無事に結婚した凛太郎と私は、その2年後、ニューヨークに旅立った。 ところが、直後に妊娠が判明して、初めての出産ということもあり、二人で相談して日本での里帰り出産を選んだ。 この時ばかりは、優香を溺愛する凛太郎も、日本での出産に賛成した。 私には遠いニューヨークも、凛太郎にとってはその距離も大して気にならないらしく、意外と頻繁に帰国していた。 渡米前の2年の間に、アールデザイン事務所は優秀なデザイナーを育成し、凛太郎が不在でも対処できるだけの準備を整えていた。 そのおかげで、ニューヨークでは心おきなくアートに触れることが出来た。 凛太郎を指名するクライアントに対しては、藤川が窓口となり、オンラインで仕事をこなしている。 最近では、あちらで仕事の依頼を受けることも増えてきて、順調にあの街に馴染んできているように思う。 後しばらくは、ニューヨークでの生活を続けるつもりだろう。 あちらでの仕事の依頼もあって、ここ最近は凛太郎の帰国が遠退き、少し寂しいのを我慢している。 今の優香には、凛太郎との再会が待ち遠しくて堪らない。 「麻里奈、大丈夫だよ。 ちょっとマタニティブルーですから…。 今日は、最高に素敵な花嫁さんを見られて、本当に幸せな気分だよ、胎教にも良いはずだからね〜。」 そう言って私は、ふっくらと膨らんだお腹を摩った。 麻里奈も一緒にお腹を撫でると、ポコポコと返事があって、二人で笑い合った。
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