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【番外編】母になる③
急に激しい痛みに襲われた私は、たちまち平常心を失いつつあった。
陣痛促進剤の効果だろうか、今までの微かな痛みとは比べ物にならないぐらい、マックスの痛みが突然やってきた。
うっ、出産初体験なのに、なんだかイキみたい感じがするんだけど?
痛い、痛い、痛〜い!
「痛〜い!
凛太郎、ナースコールして!早く!」
「お、おう!」
私の必死の形相に怯みながらも、凛太郎がナースコールをした後、すぐに和かな笑みを浮かべた看護師さんが入室してきて、母と葉月さんは一旦退室した。
お腹に装着していた分娩監視装置を外しながら、看護師さんが穏やかに声をかけてくれた。
「いよいよですね、坂崎さん。
大丈夫ですからね、みんなで坂崎さんと赤ちゃんを全力でサポートしますから、安心してください。いいお産にしましょうね。さぁ行きましょうか?」
あまりの痛みに、うんうんと頷くしか出来なかったが、看護師さんの言葉がありがたく、心に響いた。
凛太郎に看護師さんが何やら話しかけていたが、もうそれどころじゃない。
ついに来たんだ、この時が!
アドレナリンか何か出ているのか?分からないけど、不思議な気分のまま私は分娩台に上がった。マスクも装着して準備万端の凛太郎が、すぐ側から話しかけてきた。
「優香、一緒に頑張ろうな。」
「うん…」
凛太郎、マタニティー教室も行ったこと無いし、立ち会い出産も希望していなかったのに、大丈夫なの?
「大丈夫だ、本とかで勉強してきたから。」
私の心配を感じとったのか?彼はニヤッと笑ってそう言った。
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