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物事は時間が経つと変わってしまう。変わらないなんてものは絶対にない。しかし絶対ないと誰が言いきれるだろうか。
たまに思うことがある。幼馴染の親友が、もう俺のことを親友だと思っていなくて、俺が一方的に親友だと思っているだけだとしたら。俺はそれを知ったときにどう思うだろうかと。
SNSに友人が載せる写真。そこには、俺の知らない人たちと遊園地に遊びに行った様子が写っていた。隣の子は彼女だろうか、そんなことを思いながら俺はスマホを閉じる。俺は高校で彼女は出来なかった...作らなかったが正しいのかもしれない。かたや親友は高校で彼女を作り楽しんでいた。私はその光景をとくにうらやましいと思ったことはなかった。今は今の生活で満足はしているし、部活もあって忙しいから彼女を作っても可哀想な思いをさせるだけだと思っていたから。しかし、親友と彼女の写真を見ていると思うことがあった「こいつは俺の事を覚えているだろうか」と、中学時代に一緒にバカして先生に怒られたことや、くだらない話で笑いあった日々のことを忘れてはいないだろうか、そして思う。こいつは変わってしまったのだと。
確信はない、ただただ自分がそう思っただけ、それだけなのに何故かそう思った途端、彼がまるで遠く離れた存在に感じてしまった。そんな自己中心的な考えを振り払おうとするたびに同じ考えが頭を過る。以前親友にあった時のことを思い出す。高校一年生の夏、蝉の声が煩く夏の暑さを余計に感じたあの日「お前は変わらないな」そう親友に言われた。高校入学して半年、高校で友人もできたし、考え方も変わっていたと思う。それなのに親友は俺に「変わらないな」と言ったのだった。どういう意味なのか俺にはわからなかった。
大学生になって今私は近代史について勉強している。今も彼女はいないし、中高と変わらず友人も多くはない。しかし、満足した日々を送っている。そんなある日、電話がかかってきた。親友からだった。
「おう、どした」中学の頃と変わらぬ調子で話しかける。
「いやね、元気してたかなって」なんだか落ち込んだ声で返してくる親友
「さては、彼女と別れたか。ざまぁだな」
「はぁ。やっぱ、ばれたか」
「おめぇと何年の付き合いだと思ってるんだ。なんだ?飲みにでもいくのか?」
「たのむわぁ...いつもの店で」そう彼は言い残し、電話を切る。
蝉が煩い夏の日、俺はいつもの店の前で親友を待っていた。そこには、少しやつれた顔の親友がやってきた。
「おうよ、誘っておいて遅いじゃねぇか」
「すまんて」無駄口たたきながら店の中に入る。
そのあとは、ただただ酒を飲みながら元彼女との惚気話を聞かされた。
「なんだぁお前ぇ聞いてんのかぁ」
「聞いてるともよ」聞き流してたのをばれそうになりながら、適当に相槌をする。
「にしてもよぉ...本当にお前は変わらねぇよなぁ」
「そうか?俺は結構変わったと思うぞ」
「いいや変わらねぇな!その人を小馬鹿にしたような口ぶりとか特に!」
「おいおい、小馬鹿になんかしてねぇよ。馬鹿にしてんだ」
「余計ひでぇじゃねぇか!!」と二人で笑いあう。
あの蝉の煩い日に言われた「変わらない」の意味は今でもわからない。しかし、1つ確かなことがある。俺は確かに変わっているし、親友も確かに変わっている。俺の親友に向ける視線や態度は今も昔も変わらない。
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