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「空、風邪?」
「……うるさい」
少しふてくされたようなその言い方がおかしくて、思わず笑ってしまうと、空からジロリと睨まれる。
「ご、ごめん。ソラ君が可愛くて、つい」
「可愛いのはマユイだよ?」
小首を傾げてそんな風に言うソラに、真結の頬が熱くなる。そして、少し冷静になって気付いた。
あまりの可愛らしさについ抱きしめてしまったが、ソラは空の幼少期のような姿をしていて、おまけに可愛いなどと言われてしまった。それが、今目の前にいる空と重なってしまう。
「うっ……」
微かに声が漏れる。心の中ではのた打ち回るほどに恥ずかしいが、何とかそれを抑えようと悶える真結を見て、空が一言言った。
「変なやつ」
すると、すぐさまソラが反論する。
「変じゃないよ! マユイは可愛いよ!」
「ソ、ソラ君、恥ずかしいから」
真結が真っ赤になってしゃがみこむと、フッとソラの気配が消えた。それに気付いて辺りを見渡すと、ソラの姿がなくなっている。
「……消しちゃったの?」
「あいつがいるとややこしい」
「私がいると出てこれるって言ってたけど……」
空はフゥと吐息をつき、肩を竦めた。
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