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「しまった、寝すぎた」
「え?」
慌てて荷物を持って出て行こうとした空は、扉の前でふと立ち止まる。そして、真結を振り返った。
「常盤真結、今から時間あるか?」
「え? あ、あるけど」
「じゃ、来い。実験してみたい」
「実験!?」
「早く。遅刻する」
そう言って、空はさっさと出て行ってしまう。真結は急いで教科書などを鞄に詰め、空を追いかけようとする。
「ちょっと待ってよ! 日直は鍵閉めなきゃいけないんだからねっ!!」
空はチラリと真結を一瞥すると、これみよがしに溜息をついた。
溜息をつきたいのはこっちだ。急に来いだの、実験だの、真結にはさっぱりわからない。
しかし、心のどこかでワクワクとした期待が膨らんでいるのを感じる。
これまで何の接点もなかったクラスメートとの繋がりができた。しかも、皆が興味津々の割には遠巻きにしていた人物だ。
思わぬところで繋がった縁に、真結の心は浮き立っていた。
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