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「それなら……こちらの鉱石なんていいかもしれませんね。でも、お客様が心引かれる鉱石が一番なんですよ」
「あ、なら……この鉱石が綺麗だなって、目が離せなくて」
女性客が指差したのは、タンザナイト。神秘的なブルーを見ると、不思議と心が落ち着き、力が湧き上がってくる気がする。
「この子は人生をよい方向へ導いてくれる鉱石ですよ。お客様にピッタリだと思います」
「……それじゃ、これでアクセサリーを作ってもらおう」
自分に言い聞かせるようにそう呟く彼女を見つめ、海は柔らかな笑みを零す。
彼女の手の中のタンザナイトに、そっと思いを込めた。
一期一会、それは運命の出会い。どうか、この縁が幸せに導いてくれますように──。
「お待たせしました!」
真結が息を切らしながら戻ってくる。その笑顔は、鉱石たちに負けず劣らずキラキラと輝いている。
「海さん、ありがとうございました」
「いえいえ、後はよろしくね」
「あのっ……ありがとうございました!」
先ほどよりも、少し大きな声で彼女はそう言った。表情も心なしか、明るくなっている気がする。
二人に笑顔を向け、海は事務所に向かって歩き出した。
今日一日で、何人の縁を結べるのだろう。そして、これから先も、ずっと。
持ち主となる客と鉱石との「縁」を結ぶ店。
──鉱石ショップ「Milestone」は、今日ものんびりとした佇まいで、訪れた人を温かく迎え入れていた。
了
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