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「名前、教えて?」
真結はどうしようかと迷う。声を出すと空に気付かれてしまう。しかし、この子ともっと話をしたい。
迷った末に、真結は自分の机からノートとペンを持ってきた。そして、空白のページにペンで名前を書く。漢字にルビも振った。
『常盤真結』
「トキワマユイ、マユイチャン!」
真結の顔に笑みが零れる。こんな可愛い子から「マユイチャン」などと呼ばれたら、キュンとせずにいられない。
「マユイチャンは、空の友だち?」
真結は頭を悩ませる。友だちではない。しかし、クラスメートだ。広義に解釈すると、友だちといえなくもない……か。真結はまたコクンと頷いた。
「そうなんだ! じゃ、ボクとも友だちだね!」
嬉しそうに言う男の子を見て、真結まで嬉しくなってくる。この子の名前が知りたくなり、今度は真結の方から尋ねた。もちろん声を出せないので、ノートに文字を書く。
『あなたの名前は?』
男の子はきょとんとした顔をする。どうして真結が声を出さないのか、不思議なのだろう。しかし、真結の顔を見上げ、元気よく答えた。
「ソラ!」
「え!?」
思わず声が出てしまい、慌てて口を手で覆う。恐る恐る空の方を見ると、空は机に突っ伏したままだ。ホッとした後、真結はノートに疑問を書きなぐる。
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