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『空は、青柳君でしょ?』
「そうだよ。でもボクもソラ!」
同じ名前? なんてややこしいのだろうか。
「ソラって呼んで!」
「……」
「マユイ!」
いつの間にか敬称がなくなった。ソラは真結の腕を掴み、ねだるようにブンブンと左右に振る。小さな男の子にこんな風に可愛らしくお願いされ、嫌とは言えない。真結は苦笑しながら、コクコクと頷いた。
「マユイ、さっき声出した。なのに、どうしておしゃべりしないの?」
「俺に気付かれたら、お前が消えるからだよ」
「ヒッ!!」
突然の声に驚き、喉が絞まったような変な声が出た。
「空! 起きたんだ!」
「なんで出てきてるんだよ」
「わかんない。マユイが近くにいると、できるみたい」
すると、空が真結をじっと見つめる。初めて空の顔を目の当たりにした真結は、思わず息を呑んだ。
長い前髪から覗く瞳は美しい弧を描き、目尻に向かってすっきりと切れている。その涼しげな瞳に野暮ったいデザインの眼鏡がかけられているが、それさえも何だかおしゃれに見えてくる。真っ直ぐで高い鼻梁、薄い唇、顔を形作る全てのパーツがバランスよく配置されており、そして、陶器のような綺麗な肌、どこからどう見ても完全無欠の美少年。どうして今まで誰も気付かなかったのかと、首を傾げたくなった。
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