不思議な出逢い

5/14
前へ
/189ページ
次へ
『空は、青柳君でしょ?』 「そうだよ。でもボクもソラ!」  同じ名前? なんてややこしいのだろうか。 「ソラって呼んで!」 「……」 「マユイ!」  いつの間にか敬称がなくなった。ソラは真結の腕を掴み、ねだるようにブンブンと左右に振る。小さな男の子にこんな風に可愛らしくお願いされ、嫌とは言えない。真結は苦笑しながら、コクコクと頷いた。 「マユイ、さっき声出した。なのに、どうしておしゃべりしないの?」 「俺に気付かれたら、お前が消えるからだよ」 「ヒッ!!」  突然の声に驚き、喉が絞まったような変な声が出た。 「空! 起きたんだ!」 「なんで出てきてるんだよ」 「わかんない。マユイが近くにいると、できるみたい」  すると、空が真結をじっと見つめる。初めて空の顔を目の当たりにした真結は、思わず息を呑んだ。  長い前髪から覗く瞳は美しい弧を描き、目尻に向かってすっきりと切れている。その涼しげな瞳に野暮ったいデザインの眼鏡がかけられているが、それさえも何だかおしゃれに見えてくる。真っ直ぐで高い鼻梁、薄い唇、顔を形作る全てのパーツがバランスよく配置されており、そして、陶器のような綺麗な肌、どこからどう見ても完全無欠の美少年。どうして今まで誰も気付かなかったのかと、首を傾げたくなった。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加