第1章 喪に服す期間

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 ついた先は本低だ。カラは迷わず本低のリビングへ入る。 今日は少し肌寒い天候だった為、暖炉に薪がくべられた。とは言え、暑過ぎないよう灯が燻る程度に調節してある。随分前から既に準備をしておいたのだ。   「Mr.アルフォード。お茶を入れて下さいますか?」 うっかり敬語に戻ってしまった。 元来、タメ口というものにカラは慣れないのだから仕方がなかった。 「はっ。霊魂に茶を淹れることが出来る筈がないだろう?」 アルフォードは片眉を上げる。 たいした嫌味だな?とその目に険が増す。 「ええ。ですが、聖職者の私はあなたとふれあえるのです。あなたの声も、姿も確とここに在ります」 カラは胸に手を添え微笑んだ。 嫌味や皮肉は無い。そんな穏やかな目をアルフォードに向けていた。 「マダム・エリザに伺いました。あなたはお茶を入れるのが巧かったと。私に教えて下さいませ。神の御許にいる霊魂は神の僕。人を導く者であらねば」 それでも彼は黙したまま、応じようとはしない。 カラは小さく嘆息し、彼の膝元で膝を着く。 そして、祈るように頭を垂れた。 「Mr.アルフォード。どうか、あなたの生きた証を私に一つ伝授してくださいませ」 カラは顔を上げて、彼の目を見上げた。 彼は無言を貫いてはいるが、カラを無視してはいなかった。その目は確とカラを映している。 「私は敵ではありません。けれど、味方でもないでしょう。私の聖名はカラ。空っぽのカラです。あなたにとって、何ほどでも無い者です。そんなに恐れを抱く必要は無い筈です」 自嘲するカラの言葉に、アルフォードは僅かに目を瞠った。 そしてようやく重い口を開いたのだ。 「先ずは、湯を沸かせ。沸騰したらティーポットを温めてから茶葉を入れろ」 横柄な言葉ではあったけれど、アルフォードはカラの願いを聞き届けてくれた。 「Yessir」
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