うつくしきけもの

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うつくしきけもの

村はすっかり荒れ果てていた。 獣人族との戦いはもう何年になった事だろうか。 獣人族は、知力はさほどではないものの、身体能力に優れ、生命力に優れ、心の臓さえ動いていれば、すぐに治癒してしまう。 “この世を我が物にしたい”と暴走した1人の科学者が作った人間と動物のキメラなのだ。 人間達は、英知を集結し、沢山の戦闘機器を作り出したが、倒しても倒しても、蘇る獣人達には、ことの外手を焼いた。 戦場で野営している兵士達は、夜行性の獣人に襲われ、日に日に数を減らしている。 男手を取られた村は疲弊し、これ以上徴兵する事は、無理な相談だった。 ドリーは夢を見ていた。 神の使いと呼ばれる、伝説の黄金の竜の夢だ。 二千年も昔の事、この世に世界を揺るがす大戦が起きた時に、それをおさめたのが、この伝説の黄金竜なのだ。 この数日、黄金竜に呼ばれているような気がしてならない。 ドリーは巫女の子であり、予知夢を見ることから、戦況を読む事が出来るのではないかと、14歳にもかかわらず徴兵されてしまった。 切迫した状況に、神にも縋る思いだったのだろう。 「ドリー、何か分かったか? 」 隊長から声がかかる。 「この場所は危険です。明日の夜には獣人の襲撃を受ける事になるでしょう」 「なら、どこへ行けば良い 」 「東へ。森の切れ目に大きな湖があります。そこは、広く周りが見渡せて安全かと 」 「そうか。では、早速、全隊移動させる事にしよう 」 慌ただしく、移動の準備が始まった。
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