あの日の魔法のように

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それから数か月── 「智哉~!俺、干し終わったら行くから、車あっためといてー!」 「分かった~」 土曜の夜に泊ってった智哉とドライブデートっていう、とある日曜。 ごく一般的なデートプランとありふれた一日の始まり。 結局ハルの指摘は何から何までドンピシャで…… 熱く溶けるような恋愛とは縁がないまま仕事一筋で一生を終えるのかも……なんて考えてたのが嘘みたいに、昼も夜も……経験したことがない気持ちで胸が満たされてた。 買い物も、映画も、カフェでのお喋りも、ドライブも……ただ智哉といるだけで楽しくて…… あられもない格好で容赦なく開かされた奥に花を咲かせ……理性を眠らせ、未知の感覚に身を任せて、ただ快楽に酔いしれて…… それが普通の日々の顔をして、俺の傍にある。 そのことが……不思議で。 ハル……お前、花さかじいさんの犬みたいだな。 ここ掘れ、ワンワン。 お前のおかげだよ。 今の幸せ、全部。 「よしっ完了!戸締り、オッケー!」 窓を指差し確認して、昨日詰めておいたかばんを肩に引っかけて。 そしてベッドを守るように伏せをしてるハルの頭をヨシヨシ、と撫でる。 「行ってきます」 今はぬいぐるみの目になったハルに笑いかけて、背を向けた。 寂しさは寂しさで、胸に置いてるよ。 お前の姿と一緒に。 でも……きっとまた会えるんじゃないかとも思ってるよ。 ふいに腕の中に現れた、あの日の魔法のように。 END
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