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「あ、そのガーゼやレース糸はこの籠に入れて」
ゆりかごのような籠の中にはすでに綿や柔らかい布がたっぷり入っていて、その脇に取っ手がついた少し柔らかい籠があった
「ニア、センターで言われた薬、もらってきた」
「それもこの籠。最後にホコリ除けにこの布で全体を包んで。そう」
「これは?」
「多分子供の予定があるのよ。こっちのお酒は多分振る舞い酒用だと思うわ」
「子供用品…」
「こうやって材料を集めてね、赤ん坊が来るまでみんなで手分けして縫うのよ。赤ん坊が欲しい人は沢山いるけど、赤ん坊の支給は少ないから。お金がある人はアガルタに行って養子をもらったりもするけど、それはなかなか大変だから、大概はセンターに子供が欲しいと申請して、自分の番を待つの。燕去もシャンバラの一部だから家族を作って家族で申請してる事が多いわね。メンバーが多いと、当たりやすいし」
カナが、柔らかな生地を撫でながら呟いた
「私も、子供欲しいです」
「わかるよ。あたしもそうだった。大丈夫、チャンスはあるよ!ヒロキもいるしね!」
不穏な言葉は聞き流して、俺は黙って荷をまとめた。馬車は結構揺れるらしいので、荷はきっちりまとめないといけないらしい。これはこれで一つの技能のようで、ニアの厳しい指導のもと、みんな一通り縄の扱い方を教わった
荷台の一部に檻が据え付けられて、ニアが何処かからヤギを一頭連れてきて中に入れていた。檻の戸は荷台からヤギが降りやすい方向に開くようになっていた
それでも午前中の早い時間に荷造りが終わり、俺たちは、燕去の市街地を後にして、市街地からすぐのガレリアへと向かった
速度はびっくりするほどゆっくりだ。何故なら、荷車を引く馬に速さをあわせて歩いているからだ
時代劇や映画のイメージでは、馬は速く走っているが、実際に荷を引かせたり旅行に使う時はそんなに速くは走らせないそうだ。それに馬も、俺が知っているスラリとした馬ではなく、足の太いゴツい馬でだいぶガッシリしている
早馬が無いわけではないらしいが、その場合替え馬を沢山用意してリレーしていくのだそうだ
この辺りの馬は、荷運びと農作業に使う馬だから足は遅いが力が強いらしい
荷車は一応御者台がついた四輪のものだが、よく使われているのは御者台のない二輪のものらしい
四輪といっても、大きな車輪が後ろの方に一対、小さめの台の下に入ってしまうような補助輪が手前に一対ついている形で、自動車の四輪とはだいぶ違う
それを手綱を持って交代で引くことになった。御者台は、誰かがバテた時用、だそうだ
なんだかんだいってもニアは親切だ
そういえばアーマーを身につけていたのは昇級認定の時だけで、普段着はごく普通で、ただ赤い革の剣帯に印象的な赤い長剣と短剣を下げている
それだけはいつも身につけているので、赤い髪と相まって『紅の戦士』という二つ名はイメージにぴったりだった
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