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それから日があるうちに、とその前に泊まった村まで移動し、頼まれていた子供用品を届けた
届け先はいくつもの離れを渡り廊下で繋いだ巨大な母屋を持つ大きな家で、家人から是非にと言われ、今夜はそこに泊まる事になった
俺たちが泊まる部屋は離れに用意され、食事は母屋。風呂は別棟にあり、まずはお風呂をと勧められてありがたくいただく
民家にしては大きい風呂だ。それでも6人一度に入るのは流石に無理だろうという事で、3人ずつに分かれた。カナ、ユニ、ニアが先に入り、俺とイチカとサマハナが後に入る
「基本的に、浴槽の湯は汚さない事」
サマハナが、お風呂を借りるマナーを教えてくれた
「ここにぬか袋の用意があるから、これは借りて使ってもいい。ぬか袋の始末は家によるから、使い終わったら水気を絞ってわかりやすい場所におく」
「今日はほとんど汚れてないから大丈夫だけどね。基本的に、綺麗に使うのが大事。お風呂が終わったら、床を流して、桶なんかは元の状態に戻す」
カナとユニは、きっとニアの指導を受けていたのだろう。街区Aではこういう細かい所は教えてもらえなかった
お風呂をもらい、母屋の食堂に集まる。ここにも畳の座敷があり、食堂は土間と座敷だった。農作業の時は上がるのが大変なので土間で食べるのだそうで、折りたたみの机と椅子が土間の隅に積んであった
このご家族は、なんと20人以上の大家族だそううだが、今全員いる訳ではないらしい上に見た目では誰が年長者なのかはわからない。とりあえず宿とお風呂のお礼をいうと、ふっくらした女性が笑って、気にしなくていいのよ、と言ってくれた
食事は大皿に盛って出てきたものを取り分けて食べるスタイルで、人数が多すぎて戦場のようだ。この家には子供も2人いて、その子達の走り回る姿がなんだか懐かしい
「再来月くらいに、子供が来ることが決まってね!」
「おめでとうございます!」
「こいつらのお下がりもあるけど、色々準備してやりたくてさ」
「お祝いにと思って、ヤギをお持ちしました」
ニアが連れてきたヤギは、この家のためだったらしい
「あのヤギは我が家にでしたか!それはそれは!ありがとうございます。いやはや、譲ってもらえないか話そうと家人と相談していたところだったんですよ!」
「春には仔を産む雌ヤギですから、乳の足しにでもと思いまして」
「うちのヤギは上手くかからなくて、間に合わないかと思っていたところなんです!助かります」
「………ヤギの乳って飲めるの?」
イチカが小さく聞いてくる
「俺に聞かれても」
サマハナが、耳ざとく聞きつけた
「子供にはヤギ乳だろう?」
「牛乳じゃないんだ?」
「ヤギの乳のがいいっていうよ?飼いやすいしね。ヤギは春に仔を産むし、お祝いにはぴったりだよな。流石に紅の戦士はやることも豪快だよな!」
食事は家庭的な料理で、種類も量もふんだんにあったが、特に俺たちをもてなすためではなく毎日こんな感じらしい。家族以外にも、飯炊きや掃除、雑用をする使用人が5〜6人住み込みでいるという
次々と酒を勧められ、あまり飲めない俺は若干テンパったが、ニアが引き受けてくれて助かった。ニアはほとんどザルのようだった
豪快に食べて飲んで笑うニアとは対照的に、カナとユニは隅で大人しく料理を食べていた。獣人奴隷は珍しいようで、チラチラと眺められてはいるが、話しかけるられるまではいかない
しかし、子供達は好奇心が抑えられなかったようで、結局食事が終わる頃にはカナとユニと、それからサマハナも子供達にペタペタ触られまくっていた
俺たちは先に離れに戻って寝る事にしたが、ニアはまだ飲むようで、母屋に残った
部屋に入るとサマハナが扉の外側に上着をかけて、キッチリ扉を閉めた
「それはなんかのまじない??」
「夜這い避け。部屋の外に服が出してあるのは取り込み中です、の合図なんだよ。逆に拳一つ分扉を開けておくと夜這いOKのサイン。さっきニアにやっとけって言われた。ヒロキと僕は見た目だけじゃわかんないけど、カナとユニは獣人………ナチューレなのが一目でわかるからさ、多分こうしとかないとやたら誘われるって」
「そ、そうか」
民家に泊めてもらう時は気をつけよう
実際、夜中に廊下に何度も人がいる気配があって、俺はなかなか寝付けなかった
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