エマの屋敷へ

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翌朝早くにニアに起こされて、緊張していた割にはよく寝た事に気づいた 母屋で朝粥をいただき、出発する 荷車はかなり荷が減ってきたので、交代で御者台に乗って馬を扱う練習をしながら進んだ。馬の歩みも軽くなっていて、昨日よりだいぶ早い エマの屋敷を出た後最初に寄ったガレリアで、 アンブロシアに寄った。店主は俺たちを覚えてくれていて、クッキーをサービスしてくれた そして、エマの屋敷があるドームに 改めて見てみると、燕去(えんきょ)のメインドーム程ではないが大きなドームだという事がわかる。エマの屋敷の方には小さいが山があり、そこが俺たちのはじまりの部屋だったということを今は理解していた 全体的に緩やかな起伏があり、小さな丘をぬうように道が続く 林や森、冬枯れの草原に早春の花が咲く 泉や小川、小川にかけられた橋と水車小屋 風にそよぐのは麦畑か 今まで通ってきたドームも、とても自然で綺麗だったが、このドームは絵画のような美しさがあることに気付いた 小さな家が集まった集落で、頼まれていたものをサーシャに手渡して全ての指名依頼を完了させた 「おやまあ。ほんのひと月で4級!すごいね。もう雑用は頼めないね」 「いや、指名して貰えれば、時間が許せばやりますよ」 空になった馬車に揺られながらいよいよゴトゴトとエマの屋敷へ向かう 前回はたった一晩の滞在だったのでいまいち把握できていなかったが、エマの屋敷は門や塀はないものの非常に美しくて大きい 何風と言えるほど建築に詳しくはないが、基本的にはレンガを組んで作ってあり、複雑な形をしている 車寄せというのだろうか、正面玄関の前にはアーチのある屋根付きの箇所があり、美しい石畳が敷き詰められている。そちら側から見る屋敷はレンガ壁の赤茶が目立つ豪邸と呼ぶにふさわしい造りになっていた しかし東屋と大きな木を挟んだ反対側にまわりこんで見ると、コンサバトリーと縁側のようなもの、それから納屋と厩があり、更に裏手に前に泊めてもらった棟もあり、どちらかというと俺のイメージでは農家の造りだ こちら側には鶏も歩いていて、牧歌的な光景が広がっていた 「ニア、こっちに馬車をつけてくれる?」 俺たちが来るタイミングを知っていたかの様に、エマが裏手から出てきて声をかけてくれた 改めて見ると、エマとニアはどこかしら似ているところがある。年齢がわからないところも含めて、謎めいた雰囲気のある美人だ。美人と言っても目鼻立ちが美しいというよりは、ネコ科の肉食獣のような独特のしなやかな美しさ 馬車をとめて、馬を繋ぎ直してから俺たちはエマの屋敷に入った
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