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「エマ、久しぶり!」
「本当、何年ぶりかしらね」
エマとニアは、これまでの話ぶりからわかるように旧知の間柄のようだった
「とりあえず、軽い食事とお茶を用意してあるから、こちらでいただかない?その後、手足を洗っていただいて、中で今後の事について話し合いましょう」
明るいコンサバトリーにテーブルと椅子が用意され、軽食とお茶が準備されていた
「昨日泊まったお屋敷もすごかったけど、この家もすごいな!」
「あなたがサマハナね?私はこの屋敷の主人エマ。ニアとは古い友人なの。よろしくね」
「あ。はい、よろしくお願いします!」
「素直でいい子ね」
エマはクスクス笑った。サマハナは慣れない握手に照れたようで、頭をぺこりと下げていた
「ほんのひと月で4級。ニアあなた横車押したでしょ」
「少しね。でもあたしが口を出さなくても6〜7級にはなってたよ。だからこそ昇級認定会が開かれたわけだし」
「センターは渋ったんじゃない?」
「そりゃね。薬草摘みとスキルの使用だけで、まさか10級の壁越えるとは思わないじゃない?」
「それで、一緒に来たわけね。まあ、私もこの子達が戻ってきたら、トレーニングしてあげようとは思ってたけど」
「あ、ありがとうございます。あの、レッスン料って、俺たちの持ってるお金で足りますか?」
ニアとエマは顔を見合わせて笑った
「ただでいいわよ」
「…そんな、そこまでしてもらう理由がありません!」
「始まりの部屋から来たノービスが、ひと月で飛び級して、ニアに連れられて戻ってきた。なかなか面白いもの」
「そうそう。結局、シャンバラはどこも平和で退屈。たまに討伐依頼が出ても野犬やイノシシとかでさ。シャンバラには殆ど魔物は出ないからねぇ」
「魔物って、本当にいるんですか?」
イチカがたずねた。確かに、今まで見てきた燕去の街道は、平和そのもので、魔物はおろか盗賊すら見かけなかった
「いるところにはいるわよ」
応えたのはエマだった
「特にダンジョンが深い古い国には多いわね。魔物や魔獣や魔人」
「魔獣や魔人ってなんですか?」
「んー。例えば、ごく普通の獣が普通じゃなくなったものや、下等な魔法生物が、魔物」
「具体的には、犬や猫が魔物化したヘルハウンドやキラーキャット、オオコウモリのウォーバット、巨大なハチのホーネット、それからスライムとか吸血ヅタなんかもそうね」
「魔獣と魔人は知能が人と同じか人より高いもの。魔獣ならドラゴンとかユニコーンとかケンタウロスなんか。魔人ならバンパイヤやダークプリーストなんかかな。魔族って呼ぶ事もある。あと、亜人として、ゴブリンやトロールもいるけど、亜人は人よりちょっと知能が劣る場合が多いわ。属性も魔というよりは、縄張り意識が強い人型の生き物って感じ」
「僕は獣人も亜人だって習いました…でもカナやユニ見てるとそんな感じしないんですけど」
「獣人は殆ど人と変わらないわよ?耳と尻尾があるくらいで。獣人は亜人とは呼ばないわね。同じく亜人は繁殖能力があってもホモ・ナチューレとは言わないし」
そのあたりの事は、街区Aでは殆ど教えてもらえなかったので、ありがたい
「あたし、魔女の山に行きたいんです!」
この流れなら聞けるかと思ったのか、イチカが突然魔女についてたずねた
「お二人なら何かご存知じゃありませんか?」
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